全銀システム障害で浮き彫りになった今後の課題
財界オンライン / 2023年11月28日 15時0分
10月上旬に発生した銀行間の資金決済を行う全国銀行データ通信システム(全銀システム)のシステム障害は復旧まで丸2日間かかり、送金と受け取りで延べ500万件超の取引に大幅な遅れが出た。1973年の導入以来、初めての障害。
今回の障害は全銀システムと接続するため、各金融機関に2台ずつ備えた中継コンピューター(RC)を更新する際、銀行間の手数料チェック機能のプログラムに不具合があり、発生したと見られる。全銀ネットは手数料をゼロ円に設定したパッチをベンダーのNTTデータと開発し、システム復旧に漕ぎつけたが、あくまで応急処置で、正常化のメドは立っていない。再発懸念が拭えないのが実態。
RCは保守期限を迎える6年ごとの更新となっており、2029年まで24回に分けて全ての金融機関で実施される予定。今回、振り込みなどができなくなった三菱UFJ銀行、りそな銀行など10の金融機関はその第1陣だった。根本的な原因が究明できなければ、来年1月に実施する予定の第2陣以降の金融機関でも同じような障害が繰り返される恐れがある。
全銀ネット理事長の辻松雄氏は旧電電公社時代から全銀システムの開発に携わるNTTデータに「原因を早急に解明するように伝えている」と強調したが、その言葉はシステムの保守をベンダーに一手に依存する体質をうかがわせた。
さらなる懸念は27年に稼働が始まる予定の次期(第8次)全銀システムの開発への影響だろう。約8年に1度の頻度でシステムを全面更新してきたが、次回はスマートフォン決済などフィンテックを取り込む「デジタル金融時代の重要なバージョンアップになる」(メガバンク幹部)と位置付けられている。
ところが今回の障害はこの次世代全銀システムへの移行にも大きな影を落とした。次期システムの稼働を27年から先延ばしする案も浮上している。
日本でのフィンテック育成を掲げる金融庁はこれまで全銀システムの開放を促してきたが、決済の大動脈の安定性確保とどう両立を図るのか。監督当局の見識も問われる局面だ。
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