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〈今や日本最大のIT企業〉NTTデータグループ・本間洋の「〝つくる力〟と〝つなぐ力〟の融合を」

財界オンライン / 2023年11月17日 7時0分

本間洋・NTTデータグループ社長

NTTグループ全体で最もグローバル化が進む企業に

「国内も、海外も、事業をデジタルの時代にふさわしく、機動的に顧客に近いところで、いろいろな意思決定ができるような経営体制に変えたいと考えた。持ち株会社がグローバルにグループ全体の戦略を策定し、国内事業・海外事業のシナジーをしっかりつくっていく。また、海外50数カ国で事業をしているので、グローバルなガバナンスを強化していきたい」

 こう語るのは、NTTデータグループ(G)社長の本間洋氏。

 2023年7月から持株会社制に移行し、新たに誕生したNTTデータG。国内事業会社のNTTデータと、海外事業を統括するNTTデータインクを傘下に置く形となった。

 この結果、今期(2024年3月期)の売上高は4兆1000億円となる見通しで、富士通(3兆8100億円)、NEC(3兆3800億円)を上回り、NTTデータGは国内最大のIT企業となる。同社が当面狙うのは、2025年にIT業界の世界トップ5入りだ。

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 同社の再編は、NTTグループ全体の再編の一環でもある。

 NTTの前身である日本電信電話公社が民営化したのは1985年。固定電話を主体に事業を展開していたNTTだが、屋台骨だった通信事業は徐々に衰退。この10年を見ても、連結売上高(23年3月期は約13兆円)に占める通信の割合は7割から4割に減少した。

 この間、成長を続けてきたのが非通信分野の中核を担うNTTデータG。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)が普及し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中、国内外でデジタル需要は拡大している。

 本間氏もIT投資の目的が昔とは変わってきたとして、「かつては既存の業務をITに置き換えるのがメインだった。現在はデジタル技術を活用して、自動化や革新的で新しいサービスや商品をつくったり、新しいビジネスモデルをつくったりする投資が増えており、グローバルで堅調だと思う」と語る。

 社会課題が複雑化する中で、これから同社に求められるのは、顧客に新たなITサービスを提案できるコンサル能力だ。その意味で、NTTデータGのライバルは、米IBMや米アクセンチュアのようなコンサルティング会社も含まれる。

「既存の業務をIT化するだけならやることは決まっているが、これからデジタル技術を活用して新商品やサービスをつくるとなると、お客様と一緒になってビジネスモデルをつくっていく必要がある。そうした上流の対応力をつけるには、きちんとデジタル技術の目利きができ、アーキテクチャーに裏付けされた実現可能なコンサルティング能力が大事になる」(本間氏)

 今回のNTTデータGの再編は2段階で行われた。

 昨年10月にNTTデータの海外事業と、データセンターなどの海外通信事業を担うNTTリミテッドの事業を統合し、NTTデータインクを設立。NTTグループ各社が個々に行ってきた海外事業をNTTデータインクに集約し、今年7月の持ち株会社制へとつながっていく。

 これまで、NTTデータの海外事業はシステムインテグレーションなど、システム構築を得意領域としていた。一方、NTTリミテッドはネットワークやデータセンター、クラウドサービスなど、システムをつなぐところに強みがあった。

「当社が持っていた〝つくる力〟に〝つなぐ力〟を加えることで、国内だけでなく、海外でもお客様にトータルなサービスを提供できる体制ができた。NTTデータGだからこそ提供できる仕組みや価値をグローバルで創造していくことが目的」(本間氏)

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 もともとNTTデータの国内売上高は約1.6兆円、海外売上高は約1.2兆円。そこにNTTリミテッドの売上高約1.2兆円が上乗せされ、4兆円を超える企業体となった。

 すでに海外売上高比率は6割超、NTTデータGは世界56カ国・地域で19万人超の社員を抱え、NTTグループで最もグローバル化が進む企業となったのである。

 また、NTTリミテッドが展開するデータセンター事業が加わったことで、同社は世界3位のデータセンター事業会社となった。一方、データセンター事業は先行投資が必要で、NTTデータにとってはあまり手掛けてこなかった領域。

 それだけに本間氏も「先行投資をして、お客様に長く使っていただく中でフィーを回収していくモデルなので、投資の収益性や財務の健全性をきちんと考えながら、事業を進めていきたい」と話している。



金融機関、ベンダー それぞれの責任は?

 ただ、そうした矢先に起こったのが、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)のシステム障害問題。10月10~11日の2日間、銀行間の送金などを行う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」に障害が発生し、三菱UFJ銀行やりそな銀行など、10の金融機関で合計500万件を超える取引に影響が出た。

 1973年のシステム導入から初の障害発生となった今回の問題。全銀システムと各金融機関をつなぐ「中継コンピュータ(RC)」で不具合が発生したとのことだが、11月6日時点でまだ詳しい原因は分かっていない。

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 RCは保守期限を迎える6年ごとに更新する。2029年までに24回に分けて更新を行う予定で、第一陣となった14の金融機関のうち10の金融機関で影響が出た。

 実は同システムの開発を行っているのはNTTデータ。全銀ネットは10月18日に記者会見を開き、理事長の辻松雄氏が謝罪した上で、NTTデータと共に不具合の原因究明と再発防止にあたると説明した。

 11月6日の会見で、本間氏は「深くおわび申し上げる」と陳謝。本間氏が総責任者となる「システム総点検タスクフォース」チームを立ち上げ、障害問題への本格的対処と再発防止に向けて取り組むとしている。

 NTTデータ以外のベンダーの開発事例も含めれば、今回の全銀ネットに限らず、これまでも東京証券取引所やみずほ銀行などでシステム障害は発生しているし、今後も起こるだろう。そうなった時に金融機関、ベンダーそれぞれの責任はどう考えるべきなのか?

 金融機関のシステム問題に詳しい静岡大学情報学部教授の遠藤正之氏は、「金融機関が全責任を負った上で、ベンダーに求償することはあるかもしれないが、他のシステム障害も含めて、対外的には金融機関に全責任がある」と指摘。

 その上で、これだけ大きなシステム変更の第一陣だったことから、各金融機関も利用客など、対外的にシステム更改に関する事前の報知があると印象も変わったのではないか、と語る。

「次期全銀システムでのオープン化も見据えた改革の中で発生した障害であるという視点が必要。大きな改革の初回は何らかのトラブルが出ることが多い。その意識がやや希薄だったのではないか。今後もシステムの組み換えが起こると障害が発生することは予想されるが、新技術の取り込みではそのようなチャレンジは必要であり、過度に障害を責めると、かえって保守的な発想から抜け出せなくなる」(遠藤氏)

 根本的な原因究明ができなければ、今後の更新でも同じような障害が発生する可能性はあるだけに、全銀ネット、NTTデータ、両社の責任は重い。



NTTの「IOWN」構想に向けた専門部署も発足

 現在、NTTグループは社運をかけて次世代光通信基盤構想『IOWN(アイオン)』の開発に注力している。半導体チップの信号処理を電気ではなく光で行う「光電融合」技術により、消費電力が従来の100分の1、通信速度が125倍になるという。スマートフォンの充電が1年に1回で済むというから、にわかには信じられない技術革新だが、NTTは2030年代の実現を目指している。

 NTTは28年3月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画で約12兆円を投資。中でも、AIやロボットといった成長分野に8兆円を投じる予定で、その中核になるのがIOWNだ。

 NTTデータでも、すでに「IOWN推進室」を設立。IOWNの社会実装を進めるための技術的な検証を行っており、同社には研究成果を顧客につなぎ、事業化に結びつける役割がある。また、NTTデータG全体で排出する温室効果ガスの約7割がデータセンターによるもので、今後はIOWNの持つ省エネ性能を活かし、同社の温室効果ガス削減もできそうだ。

「NTTが持っている世界トップレベルのR&D(研究開発)の力をどう生かしていくか。NTTデータGとしても、グローバルレベルで世界と連携してシナジー効果を発揮していきたいと考えている。その結果、2025年にグローバルトップ5という目標を達成することができれば」と語る本間氏。

 全銀ネットの問題のように、基盤となる事業が揺らぐようでは、真のグローバル企業への挑戦権はおぼつかない。まずは原因究明と再発防止策を策定し、グループ再編のシナジーをいかに早く創出していくか。本間氏に求められる課題は多い。

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