自動車部品子会社を売却へ パナソニック・楠見氏が大ナタ
財界オンライン / 2023年12月6日 18時0分
競争力強化から事業の選択と集中へ
パナソニックホールディングス(HD)が主要事業会社を米投資ファンドに売却する。同社は100%子会社で自動車部品を手がけるパナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)の株式売却について、米アポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社と基本合意。2024年3月末までの正式契約を目指しており、売却額は数千億円とみられている。
PASは電気自動車(EV)用充電器やカーナビゲーションシステムなどを展開しており、23年3月期の売上高は1兆2975億円。パナソニックHDの売上高の約15%を占めたものの、売上高営業利益率は1.3%にとどまっていた。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)をはじめとする自動車産業の変化に部品メーカーが対応するには、多額の投資が求められる。自社単独で投資資金をまかなうハードルは高く、今回の株式売却で「大規模かつ新たな資金調達の機会を得る」(パナソニックHD)。売却後も雇用は維持して社名やブランドを残す考えだが、アポロとの詳細な交渉はこれからで、従業員の士気を保ちつつ競争力を向上していけるかは不透明感も残る。
成長領域と位置づける電池事業を伸ばせるかも課題だ。市場ではPAS株の売却を不採算事業の整理と捉えて、「選択と集中の姿勢を鮮明にした」(アナリスト)と評価する声がある。パナソニックHDは24年3月期の電池事業の営業利益率を前期比9.4ポイント増の12.8%と見込んでおり、今後さらに同事業への投資を強化する構え。
ただ足元の電池事業の好調は、EV向け電池などを自国で生産・販売する企業を優遇する米国のインフレ抑制法(IRA)関連の補助金によるところが大きい。EV電池の顧客について、米テスラ以外を開拓する取り組みも道半ばだ。
21年に楠見雄規氏が社長に就任してから約2年半。最初の2年間は「競争力強化」と位置づけ、大胆な改革には着手してこなかった。今回、楠見氏は大ナタを振るった形で、その決断が選択と集中が功を奏すのか。
戦略の実効性が問われる。
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