富士通が新光電気を売却へ 官主導の半導体再編進む
財界オンライン / 2023年12月22日 7時0分
産業革新投資機構などの買収総額は約6850億円
日本政府の主導による半導体業界の再編が動き出した。
富士通(時田隆仁社長)が、様々な半導体パッケージ用基板を手掛ける連結子会社・新光電気工業を官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)などに売却することを決めた。
まずは富士通が保有する株式を2851億円でJICが取得。その上で、JICは大日本印刷(DNP)、三井化学と組み、TOB(株式公開買い付け)を通じて、全株式の取得を目指す。買収総額は約6850億円となる見通しで、最終的に出資比率はJICが80%、DNPが15%、三井化学が5%となる。
新光電気はフリップチップタイプパッケージやプラスチックBGA基板など、電子機器などに欠かせないキーパーツである半導体パッケージの総合メーカー。売上高は2863億円(2022年度)で、富士通が50.02%を保有。2022年から富士通は売却を検討していた。
富士通は昨今、収益性の高いデジタル・クラウドサービスを中心としたサービスソリューション事業を強化。携帯電話やパソコンなどの事業は相次ぎ売却しており、モノづくりから軸足を遠ざけ、ソフト中心のビジネスモデルに注力する考え。「ポートフォリオ変革の取り組みを加速させ、成長領域への投資に振り向ける」としている。
近年は米中対立などもあり、岸田文雄政権は「新しい資本主義」政策の中で、半導体を経済安全保障上の重要物資と位置付け、国内投資の拡大とサプライチェーン(供給網)の強靱化を打ち出している。すでに台湾積体電路製造(TSMC)やラピダスの支援に加え、23年6月にJICが半導体素材大手JSRの買収を発表した際には大きな話題となった。
ただ、前経済産業大臣の西村康稔氏は「日本が世界をリードし、世界のサプライチェーンの強靭化に貢献していく」と意気込むが、国主導の戦略を巡っては、半導体メモリーの旧エルピーダメモリのように過去に失敗した事例もある。
そうした二の舞にならないよう、国際競争力をどうやって高めていくか。日本の長期的な半導体戦略が問われそうだ。
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