【2024年をどう占う?】答える人 大日本印刷社長・北島義斉
財界オンライン / 2024年1月13日 18時0分
教育やEV、メディカルなど印刷技術の応用に注力
─ 自分たちの潜在力をどう掘り起こすか。大日本印刷社長の北島義斉さん、印刷業界も新領域の開拓が続きますね。
北島 紙の印刷物が減っていく傾向の中で、いろいろな分野に事業の領域を広げており、全般的には回復傾向にあると思っています。ただ、インフレや原材料の価格がどうなるか。地政学のリスクはさらに拡大するのか。24年はまだまだ見通しは不透明な感じがしますね。
─ その新たな分野で特徴的なものはありますか。
北島 例えば、メタバースの中でサイバーセキュリティの訓練を行う事業や不登校の子どもたちがメタバース内でアバター(分身)となって登校して授業を受けるなど教育の一部の手助けをする事業などを行っています。他にも東京都の学校でテストの採点をデジタル化することにより先生方の労力を削減し、子どもたちと向き合う時間を増やしていただくようなお手伝いもしています。
─ ものづくりでも印刷技術を応用していますね。
北島 ええ。印刷技術を応用してリチウムイオン電池の外層材や有機ELディスプレイの製造工程で使用する部材、テレビなどの画面への光の反射を抑えるフィルム、太陽電池用の部材など様々です。さらにEVシフトや有機EL化は進んでいくと思いますので、引き続き力を入れて取り組んでいきます。
さらに「どうしてそんなことをやっているの?」と言われるのがメディカル・ヘルスケアです。実は当社にはもともと、薬の原薬を作っている会社があります。そこでメディカル・ヘルスケアの事業をさらに発展させるため、医薬品開発支援のシミックホールディングスさんと一緒に、原薬から製剤までを一貫してできるようにしました。
─ これも従来の印刷技術と関連するのですか。
北島 はい。原薬製造では分散や合成といった技術を応用しています。
─ 23年は投資家との対話を強化した年でもありました。
北島 以前から我々は「第三の創業」を掲げ、黒子から、社会課題を我々自身が捉えながら、新しい事業を開発していく変革を進めています。長期的な目標を設定し、23年から25年までの3年間の中期経営計画で達成すべき数値目標を掲げました。
我々は保有する資産が大きいので、なかなかROE(株主資本利益率)などが上がりませんでした。中計ではROEを上げ、PBR(株価純資産倍率)も1倍以上にすることを目指し、財務および非財務の基盤の強化とともに、世の中に価値を提供する事業に力を入れていきたいと思っています。
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