【2024年をどう占う?】答える人 JTB会長(日本旅行業協会会長)・髙橋広行
財界オンライン / 2024年1月15日 18時0分
コロナ禍3年で萎縮したアウトバウンドの復活がカギ
─ インバウンド客で旅行業界は明るくなっていますが、JTB会長で日本旅行業協会会長の髙橋広行さん、観光需要の予測を聞かせてください。
髙橋 23年の旅行業界はコロナ禍から抜け出し、復活再生に転じることができた年でした。一方でインバウンドが急激に回復したことで人手不足などの問題が顕在化しました。
今の旅行業界は少しいびつで、訪日インバウンド旅行はコロナ前の9割程度まで回復したものの、業界の最大にして喫緊の課題はアウトバウンド、すなわち日本人の海外旅行です。これがまだコロナ前の6割程度です。
─ 円安も要因ですか。
髙橋 それもありますし、航空運賃や燃油、現地経費を含めた旅行費用の高騰があります。もう1つは国民の皆さんのマインドに関わる部分で、3年間丸々海外旅行に出掛けていなかったため、海外旅行に対する渡航意欲がかなり萎縮してしまっているように感じます。ここをどう解きほぐしていくかです。
いま業界を挙げて「Imakoso 今こそ海外!」というキャンペーンを展開しています。その目玉の1つがパスポートの取得費用の支援です。実は日本人のパスポート取得比率はかつての25%程度から17%まで下がっている状況です。
─ そこまで低い?
髙橋 ええ。こんなに低い国は先進国で他にありません。これを何とか底上げし、海外旅行に対する気運醸成を官民一体となって図っているところです。もちろん航空会社の皆さんにも多大なるご協力をいただきながら、何とか海外旅行を復活させたいと思っています。
─ その中で足元の人手不足にどう対応していきますか。
髙橋 これは本当に深刻です。特に旅行各社はコロナ禍で人員削減を余儀なくされましたからね。観光業は大丈夫なのかと不安視する向きはあると思います。まずはこのイメージを払拭していくと。国も観光が成長戦略の柱であり、地方創生の切り札と言ってくれています。観光業の将来性や成長性を、しっかりと世間にアピールしていかなければなりません。
もちろん、一朝一夕に賃金を上げるのは難しいですが、ここは我々の自助努力。商品やサービスの高付加価値化を進めて収益性を改善し、賃金を含めた労働条件の改善を図っていきます。
─ 自助努力の一例は。
髙橋 これまで旅行各社が重複して行ってきた同じような業務を一元化し、共有して利用可能な仕組みを業界として構築し始めました。このようなプラットフォームができれば生産性も向上できると期待しているところです。
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