アサヒグループホールディングス会長・小路明善の「社員は会社の命。付加価値を高めるためには、人への投資と商品開発投資が欠かせない」
財界オンライン / 2024年1月31日 7時0分
「コロナ禍では国内外含めて、外食事業という産業が非常に苦しい状況が続いた。それに伴いわれわれのビール・飲料事業、食品事業も大変厳しい環境に置かれた─」。
アサヒグループホールディングス会長の小路明善氏は、2020年からのコロナ禍をそのように総括した。
「しかし、環境がどうあっても、商品とサービスの付加価値を常に高めていくことが大事である。付加価値を高めるためには二つのポイントがある。一つは人への投資であり、人的成長投資を行っていくこと。二つ目は商品開発投資」
人件費をコストとしてみるのではなく、長期的視点で持続的に人へ投資を行うこと。これにより最大のリターン(成長)を得られるので、人の成長なくして企業の持続的成長はないという考えである。
同氏は2011年にアサヒビール社長に就任してから、賃上げや研修等を積極的に行い上記二点を有言実行してきた。
二つ目に挙げた商品開発投資では、時代における顧客の潜在ニーズを捉え、「氷点下2度のスーパードライ」や「生ジョッキ缶」など新たに市場を創造してきた。亜熱帯化する日本で、冷涼感のあるビールが飲みたいという潜在ニーズ、コロナ禍で、外で飲むような生ビールを何とか自宅で缶ビールで飲めないかという潜在ニーズの掘り起こしは、他社でもやっていない明らかな差別化となる商品開発であった。
また、ホールディングス社長時代には、5年間で海外へ2兆4千億円を投資。西欧、中東欧、豪州でのトップブランドを持つ企業をM&Aにより買収した。
「海外投資の際には、自分の五つの判断基準をつくっている。一つはトップブランドを持つ企業。二つ目が、このトップブランドで高収益を上げている企業。三つ目が、高いビール醸造技術を持つ企業。四つ目が優秀なマネジメント人材がいる企業。五つ目が、アサヒの企業風土と近しい企業風土を持っていること」
小路氏のこの方針によって、当初13%であった海外売上比率も、現在50%まで成長。5年間でドメスティックからグローバルと言われる企業へ成長させた。
次にアサヒが狙うのは、北米市場と新興国市場。北米市場には今まで進出はしているものの、「北米市場は競争が激しく利益が取れない。顧客の多様化したニーズが複雑であり、非常に難しい問題」と小路氏。北米はマーケットが大きいだけに、リスクも大きい。
虎視眈々と狙う新市場をどう攻略していくか、今後の小路氏の新たな挑戦である。
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