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三菱UFJFGが総力を上げる「資産運用戦略」、銀行、信託、資産運用会社などグループ横断

財界オンライン / 2024年2月1日 20時0分

MUFGは資産運用を「第4の柱」とすべく取り組みを始めた

日本は本当に「資産運用立国」を実現できるのか─。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が資産運用強化方針を打ち出し、注目されている。グループの資産運用会社・三菱UFJアセットマネジメントを、現在の信託銀行の子会社からMUFGの直下とし、銀行、信託、証券に続く「第4の柱」に育てる。6年後にはグループ全体の資産運用残高を倍増させる方針を示した。今後の展開は─。


次期中期経営計画の主要戦略の1つ

「総合金融グループとして資産運用立国に貢献しないといけないと考えているし、皆さんの資産所得倍増に貢献したい。これは責務」と話すのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)社長の亀澤宏規氏。

 2024年は年初から株高で始まった。「新NISA(少額投資非課税制度)」も始まり、これまで投資をしていなかった個人の間でも機運が高まる。長年の課題だった「貯蓄から投資へ」、政府が掲げる「資産運用立国」に向けた第一歩を踏み出した形。

 その中でMUFGは社長の亀澤氏が「資産運用を第4の柱にする」と表明、明確な強化方針を打ち出した。

「資産運用立国はMUFGにとって、次期中期経営計画の主要戦略の1つと位置づけている」と話すのは、MUFG経営企画部企画グループ上席調査役の黒石庸介氏。黒石氏は24年4月から始まる中計の策定を担当。

 日本では日本銀行がマイナス金利やYCC(長短金利操作)の解除などの政策変更を行うことが予想されるなど、長きにわたるデフレを脱却し、緩やかなインフレ、「金利が付く時代」に向かうことが見通されている。

「預金で置いておくと実質価値が目減りするため、家計は資産運用への意識を高めており、過去とは違い投資は加速していくと見ている」と黒石氏。

 東京証券取引所が上場企業に対して「資本コストと株価を意識した経営」を要請する中、各企業が改善に乗り出し、海外投資家からの目線も変わりつつある。その流れの中で「家計資産が投資にシフトし、その資金が企業の成長に流れ、それが再び資産所得として家計に分配・還元されるという好循環につながる動きが加速している」(黒石氏)ということが、MUFGが改革に乗り出した背景にある。

「この機を逃すと未来がない、というくらいの気持ちで、『オールMUFG』で、この取り組みを推進していく」と黒石氏。

 大きな組織変革としては、24年4月にグループの資産運用会社・三菱UFJアセットマネジメントを、現在の三菱UFJ信託銀行の子会社から、持ち株会社であるMUFGの子会社とする。

 なぜ、この変革を必要としたのか? 販売会社(三菱UFJ信託)と、運用会社(三菱UFJアセット)が「親子関係」になっているのが現状だが、日本でも「顧客本位の業務運営」の中で、資産運用分野の「製販分離」が進む。「ファイヤーウォール」は設けているものの、より販売と運用が対等であることを、より明確にすることにしたのだ。

 もう1つ、大事なのが資産運用を「柱」とするからには「三菱UFJアセットの会社としての『格』を上げていくことが必要だった」(三菱UFJ信託銀行アセットマネジメント事業部部付部長・弓場則和氏)。持ち株直下になることで銀行、信託、証券と並列の関係となる。さらには銀行や信託にある一部の市場運用機能を三菱UFJアセットに集約する方針。

 また、今回は明確な数値目標も設定。MUFG全体で2030年3月までに運用資産残高(AUM)を、足元の約100兆円から200兆円に倍増、業務プロセス委託(BPO)も40兆円から100兆円と倍増以上にすることを目指す。

 MUFGは今後、銀行、証券、生命保険など資産運用に関わる他社も戦略強化に乗り出してくると想定している。その中で他社にない強みを「グローバルな『グループ総合力』」と定義。

「戦略を打ち出すだけでなく数値を含め、アグレッシブな目標を打ち出すことで、資産運用立国の実現に貢献する強い〝覚悟〟を世の中に示すことが重要だと考えた」と黒石氏。

 資産運用の他、資産管理・企業年金などの受託財産事業を統括するMUFG受託財産企画部次長の碓井仁氏は「数値は結果。お客様からの信頼をいかに集めるか。自社の運用力強化に加え、BPOを通じて日本の資産運用業界全体にインフラを提供している。さらには金融経済教育への取り組みなど幅広い取り組みができるのが我々グループの強み」と強調。

 銀行、証券、信託、そして資産運用と、あらゆるチャネルから幅広い顧客層にアプローチし、各社のサービスにつないでいく。

 また、この15年間、出資・提携している米モルガン・スタンレーとの関係は、MUFGの大きな力になってきた。まだ具体策は詰まっていないが、資産運用においてもモルスタとの連携はカギを握る可能性がある。

 1つ、業界で注目されているのが三菱UFJアセットの投資信託「eMAXIS Slim」という商品。投信ブロガーが選ぶ投信で5年連続1位を獲得するなど、個人投資家からの人気が高い。

「20年前には考えられなかった。投資にアクセスしやすくなったという時代の変化をうまく捉えることができた商品ではないか」とは三菱UFJアセット執行役員デジタル・マーケティング部長の吉田研一氏。

 三菱UFJアセットは近年、投信や資産運用をどう根付かせるかに知恵を絞ってきた。政府が「資産運用立国」を推進する今は「大きな転換点。当たり前のように投資される環境、資産運用が社会のインフラになることが究極の理想」と吉田氏。

 2030年の日本の投資環境は見通せないが、国民にとって資産運用へのハードルが下がり、「眠れる資産」だった個人の現金・預金1100兆円が投資に向かって、その資金が日本企業の成長につながるという循環ができていることが期待される。

 資産運用は10年、20年単位で進める必要があるビジネス。今後、MUFGとして経済環境の変化があっても粘り強く継続できるかが問われている。

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