1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

<世界が混沌とする中、日本の立ち位置は?> 答える人 前防衛大学校長・國分良成

財界オンライン / 2024年2月5日 18時0分

國分良成・前防衛大学校長

常に有事が起きることを想定しながら…

 ─ 終わりの見えないウクライナ戦争やイスラエル・ガザ情勢など、世界が混沌としています。果たして、人類は戦争を避けられないのか。國分さんは現在の世界情勢をどのように見ていますか。

 國分 それは、まさに国際政治の本質的な問いかけであり、人間の本性とは何なのか? 平和とは何なのか? という哲学的な問いです。

【外務省】トランプ氏の返り咲きか? 最大の関心事は米大統領選

 ある人は闘争状態にあることこそが人間の本能なのだから一定の力が必要だと考えますが、もう一方で、力によらない平和が重要だという考え方もある。戦後の日本は後者の考えが長かった。今なぜ、これだけ戦争が大きくなってきたのか考えると、冷戦時代というのは、ある意味で平和な時代だったという国際政治学者もいます。

 それは米ソ両大国の核の抑止力が成り立って、地球を壊滅させるような戦争が起こらなかった。ところが、冷戦が終わって以降はソ連やユーゴスラビアが解体し、各地で紛争が起こった。その最大の理由は抑えが効かなくなったからです。米国の相対的な力が低下していることも関連しています。

 ─ 米国が世界の警察官ではなくなったと。

 國分 ええ。米国はベトナム戦争以来、イラクやアフガニスタンなど多くの戦争や紛争に介入してきましたが、ほとんど勝っていない。世界の警察官を否定したのはオバマ大統領で、その後のトランプ政権は現実にそれを推し進めた。

 だから、米国の相対的な力の低下の影響がいろいろ出ていて、仮に秋の大統領選挙でトランプ政権が誕生することになったら、ますますその傾向が強くなると思います。われわれも米国に頼り過ぎたという反省もありますが、欧州もその辺を懸念しているようです。

 ただ、だったらわれわれに何ができるかということを考えても、相当限界があるのも事実です。そういう空白状態が生まれた時に、今回のウクライナ戦争やガザ紛争がどういう終わり方をするのか。また、東アジアでも中国や北朝鮮などのリスクは常にあるわけで、そういう時に米国の抑えが効かない状態というのは非常に危険だと思います。



日本は目を覚ませ!

 ─ では、そうした状況を踏まえた上で日本がすべきこととは何なのか?

 國分 日本は有事に向けて、きちんと平時から準備ができているかどうかが問われている。日本では喉元過ぎればどうにかなるというような空気が支配的です。

【政界】「派閥とカネ」問題で問われる自浄能力 指導力の発揮が試される岸田首相

 日本は戦後80年近く、本当の危機意識を持ってきませんでした。何かあったら日米安保で米国が守ってくれる、静観していれば大丈夫だと考えてきた。ある種、他力本願的な考えが非常に強かったと思います。

 また、平和というものは、日本があまり関与しなければ維持できるんだと考える人たちも多かったと思います。しかし、冷戦崩壊から30年以上が経った今、世界と日本の周辺で起こっている安全保障の危機は本物です。こちらから手を出さなければ平和は保てるという考えも、ロシアのウクライナ侵攻やガザ紛争を見れば成り立ちません。

 危機を扇動したいわけではありません。すべての紛争において、対話による外交がまず優先されるべきです。しかし世の中には偶発的な事件もあり得るわけです。きちんと安全保障に対処するという平時からの準備が足りなかったから、今になって慌てているのです。

 ─ 日本は平和ボケしてしまって、ほとんど準備をしてこなかったということですね。

 國分 ええ。ウクライナで戦争が発生してから、日本人の危機意識は高まったと思いますが、2年が経つと徐々に関心が薄れていますよね。ウクライナの人たちは可哀想だと言うけれど、だったら日本人は何ができるのかとか、そういう議論は何もありません。

 政府が防衛費の増額を決めて、これから5年間でNATO(北大西洋条約機構)並みに、防衛費をGDP(国内総生産)の2%まで持っていこうと言っても、財源をどうするんだとか、人をどう確保して配置するかといった議論を今になって慌ててやっているわけです。東アジアの脅威は今に始まったことではなく、以前からずっとあるのに手を打ってこなかったわけですね。

 結局、有事になって議論をするのでは遅い。これまでは根拠のない楽観論でどうにかなるとか、米国が助けてくれるという感覚が強かった。政治の世界が中心になって、国民的議論を喚起すべきです。

 ─ 当然ですが、いつまでも他人ごとではいけない。自分のことは自分で守るというのが、まずは基本ですね。

 國分 もちろんです。やはり、わたしは平和というのはつくるものだと思います。ですから、当然、戦争は避けなければならないし、危険な状態をつくり出さないためにも、一定の対応能力、ディフェンス能力はどうしても必要です。

 日本はGDPでドイツに抜かれるとか、頼みの経済力や技術力でも存在感を失い、安全保障にしろ、経済にしろ、国としての戦略がはっきりと見えてこないですよね。これでは若者に夢がなくなる。わたしはこれが一番怖いことだと思っていまして、本気でこの国がどうやって生きていくのか。今こそ真剣な議論が必要だと思います。

日本商工会議所会頭・小林健「大企業は下請け企業の声にもっと耳を傾けるべき。それが自社の成長につながる」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください