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《一筋縄ではいかない価格戦略》値上げが相次ぐ中、ローソンやファミマが実質値下げ

財界オンライン / 2024年3月1日 18時0分

ローソンの『盛りすぎ! プレミアムロールケーキ』(左)と『新宿中村屋監修 カツカレー(カツ1個増量)』の通常商品との比較

単なる値引きではないワクワク感を届けたい

「値上げに次ぐ値上げで非常に家計も苦しいのが現状。世の中が閉塞感に覆われている時だからこそ、当社としても、単なる値引きではないワクワク感をお届けし、何とかお客様に元気をお届けしたいと考えた」

 こう語るのは、ローソン商品本部本部長補佐の梅田貴之氏。

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 ローソンが2月6日から約3週間、全国の店舗でおにぎりや調理パン、デザートなどの商品の一部を、価格据え置きで増量して販売する。その名も『盛りすぎチャレンジ』。商品の包装材や容器に使用するプラスチックなどを削減したりして、価格はそのまま、重量を約47%増量して販売している。

 例えば、『盛りすぎ! プレミアムロールケーキ』は、定番の『プレミアムロールケーキ』と比較して、総重量を約47%増量。『新宿中村屋監修 カツカレー(カツ1個増量)』は、通常のカツカレーの上に、さらにトンカツ1個を丸ごとプラスした。

 価格据え置きで中身が増量しているのだから、消費者にとっては実質的な〝値下げ〟。同社は今回発売した商品1個につき1円を、能登半島地震の義援金として被災地の自治体に届ける意向。こうした被災地支援につながる気持ちやお得感もあって、顧客の反応も上々だという。

「総量ベースで言うと、昨年の2.5倍くらい準備したが、まだまだ商品が足りない。1~2年前に比べると、値上げはかなり落ち着きつつあるが、それでもまだまだ家計は大変だということで、お客様も商品をお求めになるのに2~3軒店を回ったとか、ものすごい反響。同時に店頭での募金も含めて、能登半島地震で被災された方々を少しでも元気づけることができればいいなと思う」(梅田氏)

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響などもあり、この2年間、産業界では原材料高騰や物流コストの上昇による商品価格の値上げが相次いだ。コンビニ業界でも、おにぎりや弁当、淹れたてコーヒーなどの定番商品を相次ぎ値上げしている。

 ただ、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」によると、昨年1年間の実質賃金は前年比2.5%減少。2年連続のマイナスとなった一方、消費者物価指数は同3.8%上昇しており、42年ぶりの高水準となった。物価上昇に賃金増が追い付いてこない状況では、消費者の財布の紐が堅くなるのも当然だ。

 ただ、コンビニは食品スーパーなどとは違い、定価販売が基本。それだけにコンビニ利用者は、スーパー利用客ほど価格に敏感ではないような気もするが、違いはあるのだろうか。

「特に男性のお客様はお気に入りの商品をリピートして買っていただくことが多く、50円、100円値上がりしたというのを敏感に感じる方が多い。そのため、買い上げ点数を減らしたり、今までお弁当を買っていたのを、単価の安いおにぎりやベーカリーに変更するなど、以前のようにコンビニだからといって、価格はあまり気にしないというお客様は減ってきた」(梅田氏)

 このため、ローソンは昨秋から節約志向への対応で、おにぎりや弁当の一部商品を4%から最大20%値下げ。昨年の春夏に600円以上の弁当が半分超を占めていた商品構成を、秋以降は500円台の商品が約半分になるような構成に変更した。



個人の中でも振れ幅が大きくなってきている

 また、1月からお弁当の一部商品の値下げに踏み切ったのがファミリーマート。とんかつやハンバーグなど、定番弁当を刷新。従来698円(税込)だった「とんかつ弁当」は678円に、668円だった「ハンバーグ弁当」は598円に変更。容器の変更による軽量化や容器を黒から白色に変更してインクの使用量を削減し、コストをカットした。

 ファミリーマート商品本部デリカ食品部の栗原栄員氏は「相次ぐ値上げで財布の紐は堅く、節約志向になっている反面、節約の反動でプチ贅沢のニーズが増加している。それに伴い、本格的な味へのニーズは高まっており、結果として、高価格帯の商品と低価格帯の商品の双方が支持される二極化傾向になっているのではないか」と語る。

 一方、セブン-イレブン・ジャパンは、ここまで目立った値下げ戦略は無い。それでも、親会社セブン&アイ・ホールディングス社長の井阪隆一氏は、年頭挨拶で「お客様の生活防衛意識はなお高まっており、さまざまな角度からお客様の変化を読み取ることが必要」として、今後の対応に含みを持たせた。

 マクロ的な観点から考えれば、物価上昇を価格転嫁し、賃上げにつなげ、消費を拡大する……という好循環を生み出し、日本のデフレ脱却へつなげることが必要だが、物価高に賃金増が追い付かない現状では、消費者の財布の紐は堅いまま。やはり、理想と現実は違うのか。

 前述の梅田氏は「二極化は昔からずっと言われているが、それがより鮮明になっている。同じ人でも、ずっと安いものを買うとか、高いものを買うのではなく、時には安い商品や高い商品を買うなど、調整する回数が増えたのではないか。その振れ幅が大きくなってきていると思うので、われわれはそうしたお客様のニーズに対応していくしかない」と語る。

 各社に共通しているのは「値付けは本当に難しい」ということ。消費者ニーズに合った価格体系をどう打ち出し、新たな需要を喚起していくか。価格設定に悩むコンビニ各社である。

BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎の直言「個人消費低迷の真犯人」

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