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農林中金が米金利上昇で5000億円赤字、リスク管理に甘さ

財界オンライン / 2024年6月4日 15時0分

リスク管理の甘さが浮き彫りとなった…

運用益還元が減り農協経営にも打撃

「米金利の上がり方が想定以上だった」─農林中金理事長の奥和登氏は会見でこう語った。

 2025年3月期決算で運用収支の悪化に伴い、5000億円超の最終赤字に転落する見通しを発表。この要因は米金利上昇に伴い、保有する米ドル建て債券の価値が、取得時の価格を大幅に下回り、含み損が拡大した他、ドル調達コストも膨らむ「ダブルパンチ」を受けた形。

 農中は、株式は価格変動リスクが大きいとしてほとんど手掛けておらず、債券運用に特化してきたが、今回はそれが裏目に出た。世界的な株高の恩恵を受けられない一方、金利高に伴う債券価格急落の損失を被った。

 かつて農中は、リーマンショック直後の09年3月期にも5721億円の赤字を計上した経験がある。この時は、サブプライムローン商品を組み込んだ債務担保証券(CDO)の損失が膨らんだことが原因だった。住宅ローンの貸し倒れの急増によるもので「信用リスク」に直面したものだった。

 今回の含み損は米国債の評価損が主因で、いわば「金利リスクを甘く見た結果」(市場関係者)との見方が強い。

 本来なら、米国債を満期保有に切り替えて持ち続ければ損失は回避できるが、それでは運用益が上がらず、「奨励金」と呼ばれる農協の預金に対する金利や、特別配当金などの還元ができなくなる。そのため農中は巨額赤字を伴う「損切り」をして、ポートフォリオを入れ替えることにした。

 今回の赤字に伴い、1.2兆円の資本増強に踏み切る。財務基盤を維持しなければ、ドル調達コストがさらに上昇し、さらに経営を圧迫しかねないからだ。

 農業に関連する経済事業が赤字となっている全国の多くの農協は、JAバンクによる「信用事業」や、「共済事業」に収益を依存し、黒字を確保してきた。

 ただ両事業の利益向上が見込めない中、実質的には収益を農中の運用益還元に頼ってきたのが実情。今回の農中の赤字でそれも減れば、農協経営にも大きな打撃となる。

 外国投資に依存した農中のビジネスモデル、運用能力の巧拙が厳しく問われている。

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