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【倉本 聰:富良野風話】狂暴化

財界オンライン / 2024年6月9日 11時30分

人間を最も殺している生き物は何か、というWHO(世界保健機関)の報告がある。

【倉本 聰:富良野風話】ブレーキ

 それによれば、1位は蚊、3位はヘビ、そしてその間に挟まる第2位は─。

 御想像の通り、「人間」である、というからおどろく。

 同じ種の中で殺し合う動物は人間だけだという報告もある。だがこれはあくまで頭の中で考えた理論であり、実際には同じ種でも殺し合う生物は他にもいる。

 一番多いのはミーアキャットで19.36%。死亡5匹のうち1匹は同種に襲われたことが死因になっているそうな。肉食動物ではアシカが結構高く15.31%。ライオン13.27%、オオカミ12.81%、ピューマ11.73%、ヒグマ9.72%。意外なことに平和そうに見える生き物でも殺し合うことが多いようで、リス、ウマ、シカ、ガゼルなども50位以内に含まれているという。

 霊長類は哺乳類の中では結構暴力的部類に入るらしく、霊長類の共通の祖先では2.3%、類人猿の祖先では1.8%。そのうちチンパンジーは4.49%だが、ボノボは0.68%と、近縁種でも生活スタイルによって差があるらしい。

 最も平和的生物は、コウモリ、クジラ、ウサギなどの動物で、これらには暴力的行為は殆ど見られないということで、今度生まれかわったときには是非この種に何とかまぎれこみたいと願うものである。

 動物同士の争いの原因には、メスをめぐるオス同士の争い、同様の理由による子殺しのケースが多いというが、そこでさて人間の場合どうなっているのか。ホモ・サピエンスが登場した当時は2%ぐらいだったろうという予測があるそうで、旧石器時代は3.4~3.9%。戦争が激しかった中世は約12%、その後は下がり続けているというが、昨今の大量破壊兵器の誕生でどのような結果になっているのか。

 ウクライナやイスラエルの現状を見ると、歴史の中でもこのところ、ホモ・サピエンスは異常に狂暴になっているかに見える。特にプーチンさんのロシアを見ると、領土的課題が常にバックにある気がする。歴史的にみても19世紀の昔からロシアという国は常に領土的野心を根底に様々なトラブルを起こしてきた。領土的野心はなぜ起こるのかと、つきつめて考えると、水・食料の問題に行きつく。果たしてこのままでウチは人民を食わせていけるのか。領土を拡げなければムリなんじゃあるまいか。その民族的心配性が昂じて他国への侵略を始めるのではないか。

 大丈夫ですよ、いざとなったらウチの食料をそっちに廻してさしあげますから、とやさしく言っても、そんなこと信じない。他国の言うことなんて信じられない。心配性は極限に達しており、そもそも善意なんてあるわけがない。それよりいざという時に備えて新しい武器を開発した方が良い。

 ヒトはどんどん狂暴化していき、ガザ地区のような悲劇が起こる。

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