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ライフネット生命社長・森亮介の「新領域開拓」「生保もネットで買う普通の商品に」

財界オンライン / 2024年6月5日 11時30分

森亮介・ライフネット生命保険社長

生命保険はネットで普通に買える商品になるのか?この問いに取り組んできたのがライフネット生命保険。今は大手生保などもネット生保に参入し、市場に占めるシェアは5%弱まで来た。「自分で選び、ネットで買う『普通の商品』にしていきたい」と、ライフネット生命社長の森亮介氏。2024年4月にはエーザイと共同開発した「認知症保険」の販売を開始するなど、新領域開拓も進む。

【あわせて読みたい】エーザイがライフネット生命と「認知症保険」を共同開発


ネット生保は「戦国時代」

「3年前であれば、『認知症保険』を出すことは想像できなかった」と話すのは、ライフネット生命保険社長の森亮介氏。

 インターネット専業保険会社の草分け的存在であるライフネット生命が、新たな領域の開拓を進めている。

 2024年4月1日、ライフネット生命は製薬大手のエーザイと共同開発した認知症保険「be」の販売を開始した。認知症や軽度認知障害 (MCI)と診断された際の一時金や、疾患の理解をサポートするサービスを提供する。両社は22年に資本業務提携を結んだ。

 ライフネット生命の顧客は20代から40代と、他生保の顧客層と比べても若いことから、森氏は当初「認知症のことを考えるには早いのではないか」と思っていたという。それが「エーザイさんから『一緒にやりましょう』と非常に情熱的にお声がけいただいた」(森氏)ことから共同開発への流れができた。

 当時、エーザイはアルツハイマー病治療薬を開発中で、治療での経済負担を支える保険領域やオンライン・デジタルに強みをもつ提携先を探していた。さらに治療だけでなく、早期発見・予防に向けたサービスの開発・普及も目指しており、30代、40代からの行動変容を促したいというのがエーザイの考えだった。

「40代頃から、認知症の原因物質が脳に溜まり始めるという研究結果があるが、潜在層の数は対面で働きかけるには多すぎる」(森氏)ことから、ライフネット生命が持つ「ネット」の力が求められたということ。

 この経験は大きなヒントになった。「当社がお役に立つのは、こういうやり方なのかなと気付き始めてきた」と森氏。

 世の中に残る複雑な社会課題の解決には1社ではなく、複数の会社の連携が必要。その時、「仲間を必要としている企業さんと連携して、その社会課題解決の一助となるような会社を目指していく」。すでに複数の企業との検討が進んでいる。

 ライフネット生命は06年に設立、08年に営業を開始した。ほぼ同時期に立ち上がったアクサダイレクト生命保険が今年4月、アクサ生命保険と合併し、専業として唯一の存在となった。

 今、大手生保やSBIグループ、楽天グループなどがネット生保を相次いで立ち上げ、広がりを見せている。森氏はこのことをどう受け止めているのか。

「我々1社では産業として大きくならない。コロナ前後のタイミングでプレーヤーが増えたのは大変なこともあるが、長い目で見ればいいサイン」

 産業のメカニズムは、ニッチな存在からスタートし、参入者が増えて戦国時代となり、最終的には2、3社に収斂されることが多いが、今まさにネット生保は戦国時代。

 その中でライフネット生命の強みは、前述の通り「ネット専業」であることと「独立系」であることだと森氏は分析。

 ネット以外に営業職員、保険ショップなど複数の販売チャネルを持つグループは「食い合い」を意識せざるを得ないが、ライフネット生命はネット1本でシンプルに考えることができる。

 また、独立系であることでグループの論理、制約の中で戦略を打たなくてはならない生保と違い、機動的な判断ができる。

 営業開始から16年で、ネット専業としてのブランドを築いたことも大きい。それが前述のようにエーザイとの共同開発につながっている他、KDDI傘下のauフィナンシャルホールディングス、三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友カードも自社の経済圏構築の際の生保分野でのパートナーとしてライフネット生命を選び、資本業務提携を結んでいる。

「ネットでやっていることの価値が、個人のお客様だけでなく、企業にも認めてもらえる領域が増えてきた」と森氏。

 ただ、足元でネット生保の市場シェアは5%弱。人による「最後の一押し」が必要ではないか?という声も根強い。

「イエスであり、ノーでもあると思う」と森氏。「今は人による後押しを求める人が多いが、緩やかに、背中を押さずとも意思決定ができる人が増えていく方向にトレンドが向かっている」

 これまでは業績面でも課題を抱えていた。22年度までは国内会計基準を適用しており、売り上げと費用の認識タイミングにずれがあったため、「成長すればするほど利益が出づらくなる」(森氏)という悩みがあった。それが23年度からIFRS(国際財務報告基準)を適用したことで税前利益が大幅黒字に転換。

 また、業界内には「ネットだけで査定は大丈夫か」という疑いの目もあった。これに対しては「10年以上経過した契約などでも、事故率は問題ない水準。お支払いすべきお客様にきちんとお支払いできている」と森氏。

 日本生命保険出身の出口治明氏、コンサル出身の岩瀬大輔氏らが共同で創業したライフネット生命は、長らく2人の経営者を中心としたプロモーションを展開。同時に価格の安さもあり、若年層の心を掴んだ。

 森氏は1984年愛知県生まれ。06年京都大学法学部卒業。07年にゴールドマン・サックス証券に入社。12年に「2人と仕事がしたい」としてライフネット生命に転じ、取締役などを経て18年に社長に就任。創業者2人が身を退く中、「最初は大変だった」と振り返る。今後は「経営者の名前でビジネスをするのではなく、会社のブランドを売り、次の人につないでいく」。

 生保も他業界の商品と同じく、自分で選び、ネットで買う「普通の商品」になりつつある。このさらなる普及と、エーザイとの取り組みのような社会課題解決につながる事業を、今後さらに進めていく考えだ。

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