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企業は円安環境にどう対応するか?

財界オンライン / 2024年6月18日 7時0分

円安が企業にとって大きな課題に

為替の円安が続く。一時、2024年4月には一時、1ドル=160円台という安値を付け、5月中は150円台で推移。大手製造業は円安がプラスに働き、好業績を出している一方、内需産業や中小企業、個人には価格上昇でマイナス影響が出るなどまだら模様。為替安は国力の弱さを表しているという声も強い。また、日米の金利差が縮まる気配もない中、企業の対応は。


円安の〝逆風〟が直撃 増収増益がストップのニトリ

「円安で増収増益は断念せざるを得なかった。一昨年は1ドル=115円、今は155円なので40円の円安。1円で20億円の為替差損が発生するので、800億円の損失となった。普通の会社ならつぶれてしまうが、ありとあらゆる努力で赤字にならなかった」

 こう語るのは、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏。

 ニトリHDが2024年3月期の連結業績を発表。売上高8957億円(前年同期比5.5%減)、経常利益1323億円(同8.1%減)、純利益865億円(同9.0%減)と、減収減益となった。

 前期に決算期を2月から3月に変更しており、変則的な比較となるが、上場後、33期連続で続いていた増収増益が途絶えたことになる。

 同社は商品の約9割を海外の工場で生産。これまでは円高下で業績を伸ばしてきたものの、近年は急激な円安の影響で仕入れコストが上昇。経常利益ベースで380億円の為替影響(押し下げ)があった。

 似鳥氏は今年2月から事業会社ニトリの社長に復帰し、テコ入れを図ってきたが、円安の〝逆風〟を跳ね返すことはできなかった形だ。

 3月末時点でグループの店舗数は1001店舗(国内822、海外179)。今年4月にフィリピンへ初出店したばかりだが、今後はタイやベトナム、マレーシアなど、海外の出店を強化。同時に、為替が1ドル=160円になっても、利益の出るような商品開発を進めていくという。

「これからまた新たに世界記録を狙う。社員が長く努力を続けられるような仕組みや体制を作ってバトンタッチしたい。これからが楽しみだ」と語る似鳥氏。

 今後は為替の影響を受けにくい海外出店を強化する同社だが、似鳥氏の正念場はしばらく続きそうだ。


外食産業にはインバウンドの恩恵が

 毎日の生活に直結する食品業界では価格競争が激しく、日本では価格はなかなか上げられない現状がある。価格は据え置きでも量を減らしたステルス値上げや、少額の値上げを数回ごとにわけて行うなど、ここ数年多くの企業は値上げを慎重に行ってきた。

 一方で世界的な日本食ブームが続く中、インバウンド向けの外食事業の消費は過熱。居酒屋「和民」などを運営するワタミでは、インバウンド戦略で昨年11月に一本3000円の和牛串焼きのテイクアウト専門店を築地に出店。4.5坪で月商2000万以上を稼ぐ。「安いと言って翌日も買いに来るお客様もいる」(会長の渡邉美樹氏)という盛況ぶり。しかし日本人客の姿は少ない。

 国内市場が縮小する中、外食企業も海外に出ざるを得ず、今後各社は海外出店を加速させる方針。ワタミがマカオに今年1月にオープンした「饗和民」の3月売上実績は3872万円で2号店出店も視野に入れる。

「大阪王将」などを運営するイートアンドホールディングスも、中国で外食ブランド『袁记云饺』など3500店舗を展開する袁記食品集団と美味投資有限公司と合弁会社を設立し、海外出店を加速。「牛角」「大戸屋」「かっぱ寿司」を運営するコロワイドでも、インドネシアやUAEでの出店を開始。

 来日したインバウンド客によれば、自国の同ブランド店舗の味より、来日した際に日本の店舗で食べたものの方が遥かに美味しかったという声もある。現地の本物の味を知る人が増えており、海外店舗経営はより高いレベルの味・品質の安定が必須となりそうだ。


円安がライバル企業の提携を誘発

 円安で増えるインバウンドがライバル同士のタッグを促している。ANAホールディングスと日本航空(JAL)が空港での地上業務を行うスタッフの人手不足に対応するため、各社の作業資格を相互に承認し、業務を効率化させる取り組みをスタートさせた。

 コロナ5類移行に加え、昨今の円安でインバウンドは増加の一途。しかし、「コロナ禍で退職したグランドハンドリングの従業員が現場に戻ってくるケースは少ない」(空港関係者)。グランドハンドリングとは、航空機が空港に到着してから出発するまでの限られた時間内で行われる地上支援作業の総称。

 その業務内容は航空機の誘導をはじめ、客室の整備や旅客の案内、手荷物・貨物の搭降載、燃料の給油など多岐に亘る。屋外での厳しい労働環境に加え、平均年収が326万円と建設業(451万円)やトラック運送業(463万円)を下回っていることが背景に挙げられる。

 その結果、全国のグランドハンドリングスタッフはコロナ禍前の19年と比べ、22年は約2割減少。空港などではグランドハンドリングスタッフの人繰りがつかなかったために、減便や新規就航の受け入れ制限に追い込まれる事例も出ていた。

 そこで両社は作業資格の相互承認を始めた。これまで作業資格は各航空会社独自のものとなっており、同じ業務でもそれぞれの会社に承認されなければ行うことはできなかった。仙台空港で相互承認の実践を行い、今後はグランドハンドリングの委託先事業者が同一の国内10空港でも進めていく予定。

 日々、上空で激しい競争を繰り広げていた国内の2大航空会社が地上では手を組むことで、航空・観光業界に寄与することが期待されている。

 今の円安を改善する特効薬はない。円安対応に向け、日銀への利上げ圧力も高まるが、その際の負の影響も見逃せず、先行きは不透明。当面は企業の自助努力が求められることになる。

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