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みずほFG・木原正裕の「投資戦略」、積み重ねた資本をどう活用していくか?

財界オンライン / 2024年6月14日 18時0分

戦略の進捗を説明する、木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長

3メガバンクの中でも「資本余力」に課題があるとされてきたみずほフィナンシャルグループ。社長の木原正裕氏も「みずほというと資本が過小というイメージを持たれていた」と話す。だが、ようやく国際的水準の資本比率を確保し、成長投資に打って出られる体制が整った。北米では投資銀行の買収という手を打ったが、追加策はあるのか。さらにはアジア、デジタルでの投資をどう考えていくのか。

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ようやく大型買収を手掛けられる余力が

「ようやく、みずほもここまで来たかなという印象」と話すのは、みずほフィナンシャルグループ社長の木原正裕氏。

 みずほFGがようやく、これまでの出遅れを挽回するための体制を整えた。

 同社では2021年2月から9月にかけて、グループのみずほ銀行でシステム障害が発生、当時の首脳陣が退任する事態となった。金融庁から業務改善命令も受け、再発防止を含めた業務改善計画を進めてきたが、24年1月には報告書の提出が終了。問題が収束したということ。

 さらに遡れば、02年にみずほホールディングス(当時)が不良債権処理による巨額赤字計上で、公的資金優先株の配当原資が枯渇しかけるという危機があった。

 この時は、持ち株会社の上に持ち株会社をつくる「二重持ち株会社」方式と、03年に実施した取引先企業3500社を引受先とする「1兆円増資」で何とか危機を乗り切った。

 その影響もあり、資本の厚みという点で他のメガバンクから見劣りする状況が続き、成長を進めるための大型買収などを手掛ける原資がなかった。

 それがここに来て、ようやく資本の蓄積によって財務が改善。「みずほというと資本が過小という意識を、皆さんが持っていたと思うが、これまで資本蓄積と株主還元、成長投資も進め、成果も出てきた」(木原氏)

 国際基準の銀行の危機耐性の基準である自己資本比率、普通株式等Tier1(CET1)比率を見ると、みずほFGは24年3月末で9.8%。三井住友フィナンシャルグループが10.1%のため、背中が見えた形。

「収益が上がってきて、社員の気持ちも前向きになってきている。変化の兆しを太い潮流にしていく」と木原氏。ここから、蓄積した資本を有効活用し、成長に向けた手を打つことができるかが問われる。

 23年には米国でM&A(企業の合併・買収)の助言を手掛けるグリーンヒルを約760億円で買収。海外での大型買収は15年以来だった。

 1つ注目されたのは、この買収が、みずほFGが強みを持つ北米市場強化の動きだったこと。北米では、米国みずほ証券が投資適格(IG債)のDCM(債券資本市場)で、過去10年間、米国でトップ10以内につけているなど、グローバルCIB(Corporate and Investment Bank、銀行、証券の一体化)ビジネスで強みを発揮してきた。

 グリーンヒル買収は、この強みに加え、これまで足りなかったM&A助言という、みずほにとっての「ミッシングピース」(欠落していた部分)を埋めた形となった。

 木原氏は今後のM&Aを通じた北米強化策について「(戦略については)あまり明確化したくない」と話しながら、次のように続ける。

「アメリカのキャピタル・マーケッツの部分はグリーンヒルのPMI(買収後の統合プロセス)をしっかりやることが一番重要。今の局面で、さらにどこかを買いに行くことはしない。それ以外の注力分野でオポチュニティ(好機)があれば考える」と話す。

 特に今、日本の金融機関を始め、プライベートエクイティ(PE)、不動産、インフラ、クレジットといった「プライベートアセット」への注力を強めているだけに、ある市場関係者は「北米では資産運用的なビジネスの買収を狙う可能性はあるのではないか」と見る。

 別の市場関係者は「アジアに手を打つ必要があるのではないか」と指摘する。みずほFGは12年にベトナムで、同国の大手銀行・ベトコンバンクに出資。「これは非常にうまくいったケース。カルチャーも合った」と木原氏。

 ただ、木原氏は現時点では、それ以外のアジアの国でフルラインの銀行への買収や出資をするのではなく、ベトナム、フィリピン、インドネシアにおけるデジタル領域での投資や、24年にクレディセゾンのインド子会社に出資したように、将来の成長市場、領域に布石を打つことに注力する考え。

 もう1つ、日本ではデジタル・ネットが金融の世界でも台頭。みずほFGは、ソフトバンクグループとの合弁でPayPay証券を手掛ける他、22年、23年と楽天証券に出資し、現在は49%の株式を保有している。

「世代が変わっていくうちに、多くの人がデジタルに慣れて、『資産運用はデジタルでやればいい』という世界になる可能性がある。そうしたリスクも考えながらやっている」(木原氏)

 今、デジタル領域では三井住友FGが、個人向けスマホアプリの「Olive」を展開中。銀行の他、SBI証券の株取引、ライフネット生命保険の商品、さらにはTポイントを改称した「Vポイント」などと連携したプラットフォームづくりに注力している。

 こうした「経済圏」を木原氏はどう見るか。「経済圏はおそらく、『モノ』と一緒にならなければ難しいのではないか。銀行はモノを持っていない」として、今後もオープンなスタンスで、その「モノ」を持つ相手との連携を模索するというのが、みずほFGの考え方のようだ。

 市場からの目線は「3メガの中で出遅れていたみずほだが、今後は何か手を打ってくるだろうという意味での期待感はある」というもの。

 北米でもアジアでもデジタル領域でも、今後出てくるであろうチャンスを逃すことなく投資できるか。今後も木原氏の決断が問われる。

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