「日本経済の潮目が変わってきた」飯田祐二・経済産業事務次官を直撃!
財界オンライン / 2024年7月18日 18時0分
潮目の変化が経済の好循環につながるように
─ 〝失われた30年〟を経て、デフレ脱却の正念場にある日本経済ですが、まずは現状認識を聞かせてもらえますか。
飯田 マクロのお金の流れを見ると、高度成長期の企業はお金を借りて投資を行ってきたのですが、バブル崩壊やリーマン・ショックを経て、全体として、企業はコストカット型で縮小均衡型の経営を進めるようになりました。借金もしないし、投資も海外ではしても国内ではしないということで、デフレ経済が長く続いてきたということだと思います。
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ところが、最近は少し状況が変わってきて、一つは円安で日本が安くなっているということです。
─ 今の円安は日本の国力低下を象徴していると言ってもいいですね。
飯田 ええ。日本が安くなったことに加え、地政学的な変化によって、日本が投資先として見直されているということです。
これに加え、手前味噌かもしれませんが、われわれ経済産業省では2021年から「経済産業政策の新機軸」として、世界的潮流も踏まえた産業政策の強化策を打ち出しました。今まで日本の政策というのは新自由主義的なところがあって、官は民を邪魔しないことに徹し、民間の創意工夫を生かせるような環境をつくれば経済は良くなるという考え方が主流でした。
わたしは、これはこれでやるべきだと思いますが、世界の潮流を見ますと、不確実性が高まる中で、米国にしろ、中国にしろ、欧州にしろ、各国が半導体などの経済安全保障やGX(グリーントランスフォーメーション)などの社会課題解決へ向けて、国主導で大胆な政策を打ってきています。
わたしが入省した頃、産業政策はむしろ批判されていたわけですが、今は世界中で国主導の産業政策を打ちだすようになりました。GXなどの社会課題解決に向けた取組を進めるために、われわれが一歩前へ出て、民間の予見性を高めながら投資を促していきたいと考えています。
─ 実際に民間投資は増えてきていますか。
飯田 実は2023年の国内投資は30年超ぶりに100兆円を超えました。賃上げ水準も30年超ぶりですし、株価も直近は少し下がってきましたが、最高値を更新したということで、長く続いてきたコストカット型経済が転換していく兆しが出ています。
こうしたことは、GX推進法で20兆円の支援措置を決め、5G法(改正特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法)で半導体の支援をするということでTSMC(台湾積体電路製造)を呼び込み、「スタートアップ育成5か年計画」の策定や「国内投資拡大のための官民連携フォーラム」開催など、岸田文雄政権が様々な対策を実行してきたから実現したものだと思います。
国が法律を変えて支援しなければ、間違いなくTSMCの日本投資は無かったと思いますし、周辺地区に関連企業が投資したり、インフラ整備が進んだりして、税収や経済効果が上がっているのも、こうした政策を実現したからだと思います。
─ 民間の投資が税収増につながるという好循環を生んでいると。
飯田 はい。先ほどの国内投資フォーラムを開催した際に、経団連が2027年度には115兆円の投資を目指そうと言ってくださいました。これは要するに、国だけでなく、官民が一体となって経済を良くしていこうという動きだと思います。
齋藤健・経済産業大臣も、「これまでの政策の成果が少しずつ出てきている。ここで大事なのは、これを一過性に終わらせてはならないし、気を緩めて元の木阿弥にしてはいけない」といっておられます。
やはり、30年も続いたコストカット型の思考はわずか2年では簡単に変えられませんので、この「潮目の変化」が経済の好循環につながるように、今後もいろいろな政策的措置を打っていく必要があるというのが、現在のわれわれの認識です。
続きは本誌で
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