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〈人手不足解決の鍵〉障害者雇用で高定着率を見せる「ハンディキャップクラウド」と「D&I」の〝対話哲学〟

財界オンライン / 2024年7月17日 15時0分

左から、森木恭平・HANDICAP CLOUD社長、小林鉄郎・D&I代表取締役

人手不足解消の鍵は障害者雇用にあり─。人手不足が社会課題になる中、外国人、女性に続いて打開策となるのが「障害者」。ただ、法定雇用率のクリアだけを目的にしてミスマッチが起きていることも課題だ。そんな中で専用オフィスを整備したり、テレワークと業務を結びつけて障害者雇用を後押しする2つの企業が注目される。定着率が9割を超える両社。その背景には障害者と企業との〝真の対話〟を生み出していた。


ミスマッチが起こる5つの壁

「看護師、保健師などの医療従事者、社会福祉士、専門のジョブコーチが常駐するサテライトオフィスを整備することで、障害者の体調管理などのフォローをしながら、企業の障害者雇用の体制整備のコンサルティングも行うことができる」─。HANDICAP CLOUD(ハンディキャップクラウド)社長の森木恭平氏は強調する。

 同社は約4万人が登録する障害者向け総合求人サイト「障害者雇用バンク」を運営。特長的なのは「エラビバ」と呼ばれる障害者向けサテライトオフィスを展開している点だ。東京・新宿エリアに3カ所整備し、合計で最大380人を収容できる。

 そこでは医療従事者による健康管理やカウンセリングなどを通じて働きやすさを実現。また、本社同等のセキュリティを構えて社内イントラを整備し、本社と同じ業務を同オフィスでも実行できる。単純な業務だけでなく、経理・見積業務フローを障害者のチームを通して実行するケースも出てきており、「サテライトオフィスにて従事する障害者の方の業務抜きでは作業が進行しない」(同)ほど。大塚商会やRIZAPグループなどが導入している。

 産業界全般で人手不足が大きな課題となっているが、森木氏によれば障害者雇用は「通常の人材不足以上の人材不足になっている」という。背景には民間企業の法定雇用率がある。2024年3月までは2.3%だった。従業員を43.5人以上雇用する事業主は障害者を1人以上雇用しなければならなかった。

 しかし、厚生労働省の発表によると、この法定雇用率を達成している企業の割合は50.1%と約半数が未達成であった。要は企業にとって自社の求める業務にマッチした人材を雇用することができていないのだ。「企業側・求職者側が直面する5つの壁がある」と森木氏は指摘。

 そもそも①定着率が低い上に離職率が高い②求人が少ない③採用が難しい④配慮事項や大量管理が難しい⑤障害に合わせた業務が切り出せない─。この5つの壁に加え、4月から法定雇用率は2.5%に引き上げ。26年7月には2.7%になる。

 そんな中でも同社が支援した障害者の定着率は95%を誇る。森木氏は「一般的に障害者雇用に関する情報は非公開が多く、求職者は情報弱者になりがちだ。もっと情報をオープンにし、より多くの障害者の人が働けて企業と共創できる環境整備に努めていく」と力を込める。



リモートワークで正社員雇用に

 障害者雇用のポイントは、いかに業務を切り出すか─と言える。そこで切り出した業務とテレワークを結び付けるテレワーク型障害者雇用サービス「エンカク」を展開するのがD&Iだ。代表取締役の小林鉄郎氏は「コロナ禍を経て、在宅であれば働きたいという障害者が増えた。300万人とも言われる〝潜在労働者〟を掘り起こしていきたい」と意気込みを語る。

 エンカクは同社が開発した障害者テレワーク雇用管理システムの「エンカククラウド」などを活用し、在宅勤務を支援する。それ以外にも障害者のテレワーカーに向けたテレワークの導入から採用支援、入社後の専属トレーナーによる研修と就業のサポートなども行っている。障害者にとって自宅での勤務が可能になれば、身体的・精神的な環境変化に苦手な人でも自宅にいながら仕事ができるようになる。

 一方の企業にとっては、エンカクには勤怠管理機能やタスク管理機能、体調把握・管理機能、チャット機能などが搭載されているため、たとえ障害者が自宅にいても管理が可能だ。また、交通費や場所代もかからない。「創業から15年間、障害者雇用に特化してきたことで、磨き上げたノウハウが強みだ」と同氏。

 小林氏によると、現在、障害者が手掛ける仕事の多くはパソコンを使った入力や調査関連の仕事が多いようだ。特に管理部門の勤怠・給与計算の補助業務や採用関連業務、SNSやマーケティング関連業務なども多くみられ、営業部門では顧客情報の入力やクライアントへの次回アクションのアラートなど、営業担当のサポート業務を担うケースも多いという。

 例えば、エンカクを導入した日本軽金属では精神障害者を人事部で雇用したが、その後も活躍の幅が広がり、現在は営業部での雇用を検討しており、業務を創出中だ。また、ある上場企業のグループ会社では消防設備設計の業務で人手が足りなくなった際、CAD(コンピュータ支援設計)経験のある障害者を派遣社員で紹介。その業績が買われ正社員として雇用された。

 エンカクは現在200社、540人以上の就業支援実績を誇り、精神障害者を含む定着率は90%以上。小林氏は「人口減少という大きな社会課題に直面する日本にとって、いかに働ける人を増やすかが重要。多様な人材を受け入れることが企業の競争力の源泉になる」と強調する。

 厚労省によれば、障害者の総数は推計約1160万人。障害者雇用は企業にとっては法的義務と捉えられている面が大きいが、一方でその企業のブランドイメージの向上や人手不足対策、業務フローの見直しなど競争力の強化にもつながっている。

 2社の取り組みは障害者雇用が企業の業績向上や経済活性化に資することを物語っている。

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