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工事にITを融合し、施工会社を“知的武装” ベイシス・吉村公孝の「インフラテック革命」

財界オンライン / 2024年7月26日 7時0分

吉村公孝・ベイシス社長

多重下請け構造を省き、人手作業をITで効率化する

「当社は通信やITのインフラをつくり、設計・施工・運用・保守を行っている会社。多重下請けでアナログなインフラ業界の非効率な構造をデジタルの力でアップデートし、唯一無二の〝インフラテック企業〟として、デジタル化が遅れているインフラ業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく」

 こう語るのは、ベイシス社長の吉村公孝氏。

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 携帯電話基地局や、あらゆるものがインターネットでつながるIoT機器を活用した通信インフラの設計・施工・運用・保守などを手掛けるベイシス。2021年に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場したベンチャー企業で、近年、産業界の〝縁の下の力持ち〟的な存在として成長している。

 同社のビジネスモデルは大きく二つに分けられる。

 一つは、高速通信規格「5G」や無線ネットワーク「Wi-Fi」など、通信事業者のインフラ構築や運用・保守サービスを提供する『モバイルエンジニアリングサービス』。2000年に設立した同社の祖業で、通信事業者から依頼を受け、5Gのアンテナ工事や、設置したアンテナがきちんと稼働したり、不具合がないかを遠隔で判断したりする運用管理などを行っている。

 もう一つは、生活インフラ領域の旧来の計器メーターをスマートメーターに置き換えたり、IoT機器を活用した通信インフラの構築や運用・保守サービスを提供する『IoTエンジニアリングサービス』。スマートメーターの交換工事の他、機器設置後の運用・保守、不具合対応も行うというものだ。

「当社は単なる工事屋さんではなく、機器の設置工事は工事屋さん、ITはIT屋さんと、個々に対応する企業は全国にあるが、工事とITの二刀流で設計・施工・運用・保守サービスまでをワンストップで提供できるのは当社独自の価値であり、日本のインフラをつくり、支える黒子だと思っている」(吉村氏)

 スマートメーターは、デジタル技術を活用して電力使用量を計測する装置。これまでは検針員が毎月、顧客の自宅へやってきて、電気使用量を目視で確認していたが、スマートメーターに置き換えることで、遠隔地にいながらリアルタイムで電力使用量を確認できる。このため、電力会社にとっては人手不足が続く中、検針員の確保に悩まず、コスト削減にもなる。

「現在は監視カメラやセンサーなど、様々な機器が通信につながり、データを収集するニーズが高まっている。様々なIoT通信デバイスが世の中に設置され、そのラストワンマイルにあたる設置や保守などの泥臭い部分を、当社ならITを使って効率よく、安く提供することができる。北海道から沖縄まで、全国にパートナー企業のネットワークがあるのも強み」(吉村氏)

 主な顧客は、通信キャリアや電力・ガス会社、各種機器を製造しているメーカーなど、社会インフラを支える企業。インフラ業界は歴史が長く、とかく変化を嫌いがちだ。古くから続く商慣習のもと、3次・4次下請けも当たり前で、高コスト体質が常態化している。

 創業当初は吉村氏自身がその立場にあったため、下請け構造を省き、人手の作業を極力ITに置き換える現在のビジネスモデルを徐々につくりあげていった。古い業界の商習慣に風穴を開ける存在だ。

「アナログで泥臭いメンテナンスを行う職人さんを抱える小さな会社は全国に沢山ある。そうした会社は中間マージンを抜かれており、発注する側からみると費用が高くなり、現場の社員は安月給で担い手がいないという構造的な問題を抱えている。高コストで多重下請けが当たり前になっている業界の問題をITの力で自動化し、業界全体をアップデートしたい」(吉村氏)




三度目の挑戦で上場!

 吉村氏は1972年広島県生まれ。親族は皆、自営業をしており、子供の頃から「会社員になることは想像できず、将来は起業したいと思っていた」。

 95年岡山理科大学工学部卒業後、独立系エンジニアリング会社に入社。当時はインターネットが普及し始めた頃で「ネットが世の中の将来を変えていくと確信」。エンジニアとして約5年間経験を積み、2000年にサイバーコネクション(現ベイシス)を設立して独立を果たした。27歳の時である。

 事業は比較的堅調に推移し、9年目には売上高10億円を突破。上場も視野に入った矢先のリーマン・ショックで、通信各社が一気にインフラ投資を抑制。一転、赤字に転落してしまう。

 そこから2~3年かけて再び成長軌道に乗せるも、売上が伸びても利益が伸びないため、不採算事業を整理。一時は人も離脱し、三度目の挑戦となった21年に念願の東証マザーズ(現グロース市場)上場を果たした。

 2024年6月期の連結売上高は67億円の見通し。まずは26年6月期に100億円、30年6月期の300億円が目標だ。

「これまでアクセル全開で急成長と失敗を繰り返してきた。これではいけないと企業理念を見直し、会社の目指す方向性を社員全員で共有するようになってからは経営が安定してきた。当社のビジョン『Update The World』にあるように、世の中をアップデートさせ、必要不可欠な会社になりたい」と語る吉村氏。

 インフラ業界自体が黒子だが、さらに裏方にあたる縁の下の力持ちとして、成長を続けるベイシス。吉村氏の挑戦は続く。

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