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戦後、80度目の夏、経済人の役割は【私の雑記帳】

財界オンライン / 2024年8月4日 11時30分

戦後80年度目の夏、内向き思考をどう脱するか?

戦後、80度目の夏

『8月15日』がまたやって来る。太平洋戦争で敗戦国となった1945年(昭和20年)の夏から満79年が経ち、80度目の夏である。

 79年前、先人たちは、不戦の誓いを立て、経済立国としての道を歩む決意をした。そして、GDP(国内総生産)で、米国に次ぐ自由世界第2位の経済大国になった(1968年=昭和43年)。

 その直前には、東京五輪も開催(1964年=昭和39年)。この第一回東京五輪は、戦後復興を成し遂げ、日本の高度経済成長を世界に宣言する舞台ともなった。東海道新幹線が登場したのもこの年である。

 その後、日本は第一次、第二次石油ショック(1973、1978)で、経済運営を高度成長から安定成長へ変更を余儀なくされる。

 省エネ・省資源に努め、1980年代は日本の底力を発揮。米国から、自動車、半導体分野で〝日本叩き〟という形で攻撃を受けた。

 この頃は、通貨面では〝円高・ドル安〟が続き、現在の円安局面とは真反対の状況であった。

 日本国内は80年代末、バブル経済となり、地価が高騰。三菱地所が米国ロックフェラーセンターを買収するなど、日本円の強さを世界に誇示する場面も出た。

 しかし90年代初め、バブルは崩壊、日本は〝失われた30年〟と呼ばれる長い低迷期に入る。現在、そこからどう脱却するかという転換期にある。


内向き志向の中で…

 戦後79年が経ち、世界情勢は大きく変動。戦後、長らく世界を〝統治〟してきた米国の国力低下と共に、中国が台頭。この間、資本主義(自由主義)対社会主義(共産党独裁)という対立図式の中で、後者の陣営を主導してきた旧ソ連が崩壊したのは1991年。

 現在は、GDP1位の米国と同2位の中国による米中対立という図式になっているが、米ソ対立時代とはまた様相が異なる。

 国連(国際連合)の運営を主導し、自由主義、民主主義、法の支配の下で新しい国際秩序づくりを目指してきた米国も内向き志向に変質。トランプ前大統領のように、とにかく米国第一主義(米国ファースト)を掲げ、何より自国の国益を優先させ、他国の事に構っておられるか─といったトランプ流政治が米国内で根強い支持を受ける。

 そうした国際情勢の中、日本の立ち位置をどこに取り、日本丸の舵取りをどう進めていくか─。


経済人の役割と使命

 人口減・高齢化の流れの中で、医療・年金、介護などの社会保障制度が軋みを見せる。若い世代が結婚しない、子供を産まない─といった現象が進む。人と人のつながりが薄れ、社会全体の活力も削がれつつある。

 内外に分断・対立が起こり、国と国のつながりも再考が求められる時である。こうした大事な時代の転換期にあって、政治が本来の役割と使命を果たせずにいる。

 日本が近代化の道を歩き始めた明治維新から156年。明治時代には、『富国強兵』、『殖産興業』という国策を打ち出し、西欧列強の植民地にならずに、列強に追い付き追い越せと国民も奮闘した。

 しかし、維新から77年後の1945年、敗戦国となった日本は、まず復興が大きな課題となった。米国主導のGHQ(連合国軍総司令部)による7年間の統治を経て、ようやく主権を回復したのは1952年(昭和27年)のこと。そこからは、米国との同盟関係の下、国の安全保障は米国に依存しながら、経済大国の道を歩んできた。

 しかし、国の基本軸を決める上で、安全保障は重要な要素。自分の国を自ら守り、足りない部分は同盟関係で補うという基本を踏まえることが大事。そうした基本軸をしっかりさせた上での経済構築であると思う。政治が混乱している現状況で、この基本認識は押さえておく必要がある。

「政治と経済は両輪。そして官民一体で日本の再生を図る時だと思います」とは某中堅政治家の言葉。

 危機感を共有する人たちは、政治、経済の領域に必ずいる。過去と現在、そして未来をつなぎ、また国と国をつなぐ役割を今の日本は背負っている。国力の基礎作りを担う経済人の役割もまた重い。


高い志で挑戦を!

「高い志を持ち、世の中のためになると思ったら、直ちに行動を」─。

 稲盛和夫さん(京セラ創業者)と一緒に『第二電電』(現KDDI)を立ち上げ、イー・アクセス(現ワイモバイル)などを創業した千本倖生さん(1942年=昭和17年生まれ)は今、「起業家よ、出でよ!」と若い世代にメッセージを送り続けている。

 現在は保険会社「アシュラント・ジャパン」の会長を務める千本さんだが、児童虐待にあった子どもたちを救う活動に従事したり、ボランティア団体への寄付活動も行っておられる。

 先日も、母校・京都大学に〝3億円〟の寄付をされた。聞けば、『善の研究』で知られる西田幾多郎の研究を支援するためだという。

 京都は、〝哲学の道〟でも知られ、仏教や哲学の研究が盛んな土地柄。しかし、近年は欧米で西田哲学が強く見直されているのに、本家の日本では先細りなのが現状。

 京大関係者の憂いを聞き、千本さんは私財を提供することにしたのだという。「稲盛さんにしても、生きる上で、また経営する上でも、心の基本軸、つまりは哲学が不可欠と日頃思っていましたので」と千本さんは語る。

 こうしたドネイション(寄付)が広がるのは結構なことで、経済人の役割と使命も広がる。


失敗を恐れずに挑戦を

 その千本さんが、これから日本の国力を高めていく上で必要なのは、「半導体、AI(人工知能)、GX(グリーントランスフォーメーション)、そしてアントプレナーシップ(起業家魂)の4つです」と強調される。

 日本の半導体は1980年代から90年代、世界シェアの半分近くを占めるほど強かったが、日米貿易摩擦の関係もあり、米国からの〝圧力〟を受け、萎縮していった。

 台湾のTSMC(台湾積体電路製造)や韓国のサムスン電子などに追い抜かれ、今は〝半導体ニッポン〟の面影はもう無い。現在は、半導体復活を目指して、TSMCを誘致し、熊本に大規模半導体工場を建設中だ。

 しかし、熊本で作る半導体は12ナノ(ナノは10億分の1)メートルレベルで、最先端の2ナノメートルからは「10年遅れの水準」といわれるから、これからが正念場だ。

「TSMCの創業者モーリス・チャンにしろ、起業家精神旺盛な人。1人のリーダーがいれば、あれだけの半導体産業をつくっていける。日本ももっと見習うべきだと思います」と千本さん。

 日本にも若きアントレプレナーはいる。「失敗を恐れずチャレンジし続けてほしい」と、若者を叱咤激励する千本さん。人づくりは国づくりに直結する。

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