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日本製鉄が宝山鋼鉄と合弁解消 市場変動で米国シフトが鮮明に

財界オンライン / 2024年8月13日 15時0分

かつては絆を強調していた日鉄と宝山だったが時代は変わった(提携30周年の会見で。右は三村明夫・新日鐵社長、左は徐楽江・宝鋼集団董事長(どちらも当時))

「日中友好」の象徴だった合弁も時代の変化で転機を迎えた。日本製鉄は、中国・宝武鋼鉄集団グループの宝山鋼鉄との合弁会社・宝鋼日鉄自動車鋼板(BNA)からの撤退を発表した。

 BNAは04年の設立で、当初は宝鋼、日鉄、アルセロール(現アルセロール・ミタル)の合弁でスタート。現在は宝鋼50%、日鉄50%の出資比率で、日鉄は全株を宝鋼に譲渡する。

 合弁解消の背景には、中国の市場環境の変化がある。BNAにおける日鉄の目的は「日系メーカーの中国進出を鋼材供給で支える」(日鉄関係者)こと。

 20年前は、中国で自動車鋼板を供給できる鉄鋼メーカーはBNAくらいだったが、今やプレーヤーは増え、技術力も向上。宝鋼本体自らも手掛けるようになった。日鉄は「(合弁の)所期の目的は達した」と合弁解消の理由を説明するが、日本の自動車メーカーの需要が減少局面に入る中、中国での合弁の意義が問われていた。今年は設立から20年で契約満了のタイミングでもあり、解消を決断。

 BNAは日中両国の友好の象徴でもあった。日中国交回復後の1978年、中国首脳として初めて来日した副総理(当時)の鄧小平氏は新日鐵(現日本製鉄)の君津製鉄所を訪れ、会長の稲山嘉寛氏に「あの高炉とそっくり同じものを中国に造って下さい」と語りかけた。

 日中友好と同時に、中国市場の需要を掴みたい新日鐵と、技術力が欲しい中国側との思惑が一致し、宝山製鉄所は誕生。それがBNA設立にもつながった。以降は〝蜜月〟関係が続き、両社の提携30周年に際しては当時の宝鋼集団董事長(会長)の徐楽江氏が来日、両社の関係を「先生と生徒」と語った。アルセロール・ミタルの買収旋風が吹き荒れた際には、日中の提携関係が日鉄の「盾」となるとされたほどだった。

 しかし今や宝鋼は規模で世界一となり、技術力も高まった。一方で日中の関係は冷え込み、米中対立も影を落とす中、合弁の必要性も薄れた。

 日鉄が進めるのが米国、インドへのシフトだが、そこに立ちはだかるのが、トランプ氏。米USスチールの買収は大統領選の最中で政治問題化して難航中だが、アドバイザーとしてトランプ政権の国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏を起用し、事態打開の糸口を掴もうとしている。

【関連記事】日本製鉄新社長・今井正が背負う課題、USスチール買収で労組・米社会をどう説得するか?

 また、USW(全米鉄鋼労働組合)に影響力を持ち、USスチール買収にも意欲を見せ、日鉄の買収に反対の姿勢を示してきた米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスは直近、カナダの鉄鋼メーカーを約4400億円で買収。市場からはUSスチール争奪戦から「降りた」と見られている。

 残るはCFIUS(対米外国投資委員会)と米司法省の審査、そして大統領選の結果がどう出るか。米国シフトを成功させるための重要局面を迎える。

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