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日本が迎えた「3度目の正念場」【私の雑記帳】

財界オンライン / 2024年9月21日 11時30分

日本には危機感の共有が求められる

日本再生へ向けて

「日本は危機感を持つと、みんなが踏ん張って強くなる国だと思うんですよ。日本の存在感が弱くなっていると言われていますが、ここが踏ん張り時だと思います」

 某機械メーカーのトップは、日本の再生について、〝危機感〟をキーワードにこう語る。

 GDP(国内総生産)では、日本は米国、中国、ドイツに次いで世界4位だが、1人当たりGDPでは3万3138ドルで38位。先進7か国の中では日本は最下位。アジアではシンガポール(8万8447ドル)が5位で健闘しており、香港(21位)、台湾(34位)、韓国(35位)と比べても、低いポジションにある。

 日本は人口減、少子化・高齢化が続き、マクロ的にも生産性が低下する中で、社会保障費の原資をどこに求めるかという課題を抱える。

 危機感を覚える国民は少なくない。このままでは日本は立ちいかなくなる─という危機感があるとするなら、政治、経済のリーダーはどう行動していくべきなのか。

 そういった意味でも、与党・自民党の総裁選びは、候補者がどのような国家ビジョンを打ち出してくるかという点が大変注目される。


先人たちの危機感

 明治維新(1868)から156年が経つ。維新前の江戸末期は、ペリー来航(1853)など〝異国船〟の到来で、幕府や各藩、特に薩摩、長州など西国の雄藩の間で危機感が高まった。

 薩摩藩などは当初、攘夷論が強く、英国外交官を殺傷する〝生麦事件〟などを引き起こし、薩英戦争に至った。しかし、英国の海軍を見て、その国力の大きさに気付き、薩英戦争後は、英国に学ぶという姿勢を取る。

 つまりは、海外先進国と比較して、己の弱さ・課題を把握し、課題克服へと動き出したのである。

 その結節点が倒幕となり、明治維新を成し遂げることとなる。

 日清、日露の戦役に勝利し、先進国入りする日本だが、1941年(昭和16年)、太平洋戦争に突入。その前には、満州事変や日中戦争もあり、先の大戦で日本は敗戦国となる。

 先の大戦で多くの人たちが亡くなり、原爆の投下も受けた。無辜(むこ)の人たちが被害者となった。

 敗戦となった日本だが、文字通り、焦土の中で立ち上がり、「何くそ」と踏ん張って、先人たちは経済大国・ニッポンを創り上げてきたのだ。

 その日本が今、明治維新以来、3度目の正念場を迎えている。


どんな国づくりを進めるか?

「企業は何としてでも生き抜くために、グローバル化を進め、事業発展の道を探ってきました。海外事業で収益をあげ、自分の企業を成り立たせ、存続しているわけですが、海外であげた収益は海外での市場開拓のための投資に向かっている。国内に還元されにくい現状になっているのが現実」とは某グローバル企業経営の弁。

 日本国内は人口減、少子化・高齢化で市場縮小が続く。人手不足とも重なり、生産性を上げるために、AI(人工知能)やIT(情報技術)を企業活動にどう取り入れていくかということも重要だ。

 そのAI、ITなどのデジタル領域において、日本は今、国際収支上、年間5兆円以上の赤字を抱える。かつては、電機・自動車などのモノの輸出で稼いできた日本。つまりは、貿易黒字をあげるというやり方で経済成長を遂げてきた。

 しかし、今は〝貿易赤字の時代〟となっている。その代わりに、海外での所得や海外投資で得られる配当、利子などの収入、つまり所得収支で稼ぐ時代になったということである。

 2024年上半期(1―6月)の国際収支統計では、投資利益を示す第1次所得収支が19兆1969億円と20兆円に近い数字。

 これら海外で稼ぐ所得がグローバルに振り向けられるのは当然だとしても、日本国内への投資に充てられる分が少ないということをどう見るか。

「国内市場をもっと魅力あるものにしないと、今の傾向は変わらない」とは件の経営者。

 どんな国づくりを進めていくか─。今回の自民党総裁選の行方が注目されるのはこの点にある。各候補者の国家観、政策立案能力、そして実行力が問われている。


清水博さんの安心哲学!

 時代の転換期にあって、企業経営の基本軸が問われている。

 異常気象に加え、台風や大水害などの自然災害が多発するなど、不確定要因が多い。

 リスク管理をどう経営に取り込んでいくかという課題である。

 8月は自然災害と共に、株価変動、為替相場が大きく企業経営に影響した。緊張感も走る。

 いろいろなリスクが顕在化しやすい中で、安心・安全を提供する生命保険の分野でも、「自分たちのパーパス(存在意義)が問われている」として、日本生命社長・清水博さんは次のように語る。

「日本生命グループでも、日本生命が中心になって、誰もがずっと安心して暮らせる社会をつくっていくと。そのために、社会課題を解決し、成長していくというのを一番の大前提にしています」

 清水さんが続ける。

「いろいろな不安に対する安心があります。生命保険、資産形成、それからヘルスケア、介護、保育もついていますので、このような多種多様な安心を届けられる企業グループになりたい。それを一言でいうと、安心の多面体としての企業グループになりたいということです」

 多面体の安心を提供するには、それなりの利益が必要。

「はい、それだけ生保事業をレベルアップしないといけません。例えば、世界最大の生保マーケットが米国ですので、米国市場にも本格参入するということです」

 新領域を開拓しながら、本業を磨き上げていくということである。


小宮山宏さんの提言

 世界の転換期の中で、どう日本の国力を高めていくか─。

 日本には2200兆円もの個人金融資産がある。これをもっと生かそうと、新NISA(少額投資非課税制度)などが一種のブームになっている。しかし、その資産は海外へ向けられたものが多く、そこを見直そうという意見も根強い。

「日本の食とか農業関連、エネルギー、森林などのコモンズに、2200兆円を持つ市民が投資する社会を創ればいいわけです。そうした仕組みが無いから結局、新NISAも90%が海外投資になってしまう」と、日本の新しい資本主義の方向性を提案するのは、三菱総合研究所理事長の小宮山宏さん(東京大学元総長)。

 小宮山さんは、無資源国家の日本も、都市鉱山、水、バイオマスの活用で資源の自給国家になる─というプラチナ社会の構想を打ち上げておられる。今の日本に求められるのは、こうした骨太の構想と実行力だと思う。

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