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オープングループが進める医療業界の生産性向上改革 ロボットはどこまで医療経営に貢献できるか?

財界オンライン / 2024年10月18日 11時30分

大角暢之・オープングループ取締役

RPAによる経営改革─。RPAとはソフトウェアロボットによる自動化を指す。「2030年までには医療機関は、これまでとは大きく異なる経営刷新を余儀なくされる」と語るのはRPAの先駆者的存在となっているオープングループ取締役の大角暢之氏。今後、医療業界でもデジタル化が進み、医療機関にも経営刷新が求められるようになる。足元ではどこの医療機関も人手不足に悩む。その中でロボットをいかに活用するか。医療機関の経営の在り方に関わる問題提起となる。


LIXILやオリックスで導入

「医療現場でも医師や看護師、事務スタッフそれぞれに煩わしい事務処理がたくさんある。そのためにガンなどの見逃しや病院の赤字経営を余儀なくされている。しかし、ロボット1つで見逃しを防ぎ、生産性向上を実現するなどの経営刷新が可能だ」─。このように強調するのはオープングループ取締役で共創開拓担当の大角暢之氏だ。

 プライム上場の同社は2000年に設立された旧RPAホールディングスが前身。当初は大企業向けの新規事業コンサルティングに特化したビジネスを展開していたが、リーマン・ショックを機に様々な新規ビジネスを模索。その中で人間を補完する業務を遂行するデジタルレイバー(仮想知的労働者)であるロボット(ソフトウェアロボット)へのアウトソーソング事業を着想し、日本でのRPA推進の先駆者的存在となった。

 RPAとは「Robotic Process Automation」の略称。人がパソコン上で日常的に行っている作業を人が実行するのと同じ形で自動化するというものだ。16年に欧米のコンサルティング会社が提唱して以来、世界で普及した。直近の売上高は61億円だ。

 ルールエンジン・機械学習・人工知能といった最新の認知技術を活用して、主にホワイトカラー業務の自動化・効率化を推進するという。「定型業務をなくし、現場とデジタルの徹底的な融合を図る」(同)ことがポイント。既に同社のサービスは1万2000社を超える企業に導入されており、労働時間の削減以外にも、現場に合わせたカスタマイズが可能だ。

 例えば、住宅設備大手のLIXILでは、現場開発者500人以上を育成して「自走する組織」体質を作り上げた。現場から25体のロボットアイデアが寄せられ、ロボット化により今までに業務時間にして15万時間以上を削減してきたという。

 オリックスでは沖縄にある、複数のグループ企業からなる企業が、間接部門の業務を1カ所に集約させるシェアードサービス会社に導入され、103体のロボットが現場を救済する〝人材〟として活躍。800人の子育て社員の勤務時間を1時間短縮できた上に、給料も1万円のベースアップを実現している。

 そんな中で創業25年を迎え、24年6月1日にオープングループに社名変更した同社が次にRPAソリューションを広げる領域として掲げたのが医療業界だ。足元で既に顕在化している医師不足・偏在や医療従事者の不足、超過勤務の問題を抱え、医療費の増大による医療保険制度の破綻も懸念される。その中で、国を挙げた抜本的な改革が今年から始まるからだ。

 急性期病床数の縮小と在宅回復病床の増加を主とした第8次医療計画に基づく病床数の最適化をはじめ、医療・介護・障害福祉の3つの報酬が同時に改定されるトリプル診療報酬改定、保険証の廃止を皮切りに、電子処方箋への移行、電子カルテの完全義務化など、30年に向けた医療DXが推進され、医療機関はこれまでとは異なる経営刷新を余儀なくされてくる。

「いかにミスなく効率的に経営資源をシェアできるかが重要だ」と大角氏。その大角氏が担当する共創開拓プロジェクトでは「医療4.0プラットフォーム構想」を掲げた。RPAや生成AI、IoTといった新たなテクノロジーを掛け合わせるもの。それによりフロント業務や伴走医療に特化できるように、煩雑な運営の完全自動化とシェアードサービスを実現する。

 狙いは30年に向けた医療DXの本格的な推進だ。それによって普段から何でも診てもらうことができ、相談に乗ってくれる身近な医師(主に開業医)による医療を受けられるプライマリーケアの実現を目指す。



石川県・恵寿総合病院での成果

 実績は既に挙げている。石川県七尾市にある「恵寿総合病院」では21年に同社のRPAサービスを導入し、年間で約8000時間の業務削減を達成。もともと理事長の神野正博氏は同県で10年以上前から若年世代の減少を懸念すると同時に、地方の人手不足が今後も続くことから「業務を効率化して生産性を上げるしかない」と考えていた。そんな矢先に出会ったのがオープングループのRPAだった。

 最初にロボットを導入したのは手作業が当たり前だった重症度、医療・看護必要度集計と関係する項目の実施入力漏れや算定漏れのチェック。その後、コロナ禍での「発熱マップ」など60体以上のロボットを開発した。神野氏は「地方病院はどこも人手不足。やるべき仕事がたくさんあり、そこまでの余裕はない。それがRPAによってできるようになる」と話す。

 同社によると、全国約150の医療機関でRPAの経営効果は証明されているという。ただ、医療機関は民間企業と違って「患者さんの命を守ることが大事であり、それが業務効率化の犠牲になってはならない」(関係者)といった慎重な声があるのも事実。指示書や会計処理など、それぞれの領域で異なるシステムを使っているケースも多い。それらに対して大角氏は「当社のロボットはオープンな思想で設計されている。医療機関の事務処理を少しでもなくすことが現場の生産性向上に向けた第一歩だ」と強調する。

 ムリ・ムダ・ムラをいかに取り除くか─。オープングループのRPAでそれをどこまで実現できるか。医療関係者はこれまでに直面したことがない経営改革に臨まなければならないだけに、同社の手腕が試される。

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