日本の進路を示す大局観のある政策づくりを!【私の雑記帳】
財界オンライン / 2024年11月5日 15時0分
日本を元気な国に!
地方創生は、東京過密の解消と一体─。逆に言えば、超過密の東京の都市再生は地方の振興と一体でないとならない。
今回の衆議院解散に当たって、石破茂首相は『日本創生解散』とうたった。初代の地方創生相を務めた経験から、首相の地方創生への思い入れは強い。地方創生イコール日本創生ということであろうが、地方創生を図ることは東京の超過密をどう解消していくか─という課題と重なる。
東京、あるいは首都圏の成長マネジメントが意識され出したが、地方創生とは隔離されて捉えられていやしないか?
防災省の設置案なども取り沙汰されるが、超過密の首都・東京に直下型大地震や風水害の自然災害が襲ってきた場合の〝脆弱性〟が言われる。
今、超高層のタワーマンションは〝億ション〟として人気を呼ぶが、大停電になれば、どうなるのか?
一時的な緊急避難設置は取られるにせよ、電力停止や上下水道の機能マヒなどで大混乱が予想される。高齢者などは30階、40階といった超高層から歩いて移動することもままならない。いざという時の救出作業もマヒする。
超過密・東京の課題
東京都の人口は今年6月現在で1417万人強(前年比約7万人増)。
人口減が続く日本で、47都道府県の中で、唯一前年比プラスなのは東京都だけ。
その超過密都市・東京はインバウンド(訪日観光客)を含め、内外から人々を吸引し続ける。
若い世代も働き場所を求めて、地方から東京へ集まってくるが、結婚しない人たちや子どもを産まないカップルも増えて、東京の合計特殊出生率は0.99と全国最低になっている(1人の女性が産む子どもの数の指標である合計特殊出生率は全国平均で1.20)。
働き口を求めて地方から若い世代が東京へ流れ込んでくるが、将来への不安がよぎるのか。〝結婚しない〟層や、〝結婚しても子どもを産まない〟層が増えている。
隣接の千葉、埼玉、神奈川県を含む首都圏でいうと、人口は約4000万人。日本全体の3割以上を占める。子どもが産まれない首都圏となると、それこそ将来性が失われる。どう解決していくかという命題でもある。
明治維新、敗戦、そして今…
明治維新(1868)から156年。西欧に追い付き、追い越せで日本の近代化が始まり、アジアの優等生になった。それから77年経ったところで先の大戦で敗戦。
そして、焦土の中から国民は奮起し、自由貿易2位の経済大国をつくりあげた。戦後復興を経て高度成長を成し遂げたのは1970年代であり80年代だ。
1989年、ドイツのベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統合を果たす。1991年には旧ソ連が崩壊、93年にはEU(欧州連合)が発足。そうした世界の勢力図や環境変化に呼応してか、日本は1990年代初めにバブル経済が崩壊、〝失われた30年〟に入る。
敗戦から79年が経つ今、日本全体に制度疲労みたいなものがみられる。国のあり方を巡る議論、憲法改正問題を含めて、外交、安全保障、教育、社会保障制度の見直し論議が噴出。
国の根幹をなす土台をどう構築し直していくべきか。今回の総選挙でそうした根本論議や政策提案を期待したいのだが、与野党間は中傷や誹謗にも似たやり取りを繰り返す。今の日本には、前向きの政策提言こそが求められている。
経済は、国力の根幹を形成するもの。GDP(国内総生産)で世界4位に落ち、1人当たりGDPでは38位と台湾、韓国にも抜かれてしまった日本。
しかし、日本には潜在力はまだある。半導体という〝完成品〟づくりではかつての首位の座から転落したものの、ウェハー(基板)や基礎部材づくりでは日本企業のモノづくり技術が活かされて、存在感を示している。
こうした潜在力をどう掘り起こし、日本の経済力を振興させていくか。国力掘り起こしの政策こそ、今回の総選挙で与野党は競って欲しい。生き方・働き方改革を含めて、これからの日本の進路を示す大局観のある政策づくりこそ、政治に与えられた課題だと思う。
挑戦が続く似鳥昭雄さん
元気な経済人・経営者は日本にもおられる。ニトリホールディングス創業者で会長の似鳥昭雄さん(1944年=昭和19年3月生まれの80歳)もそのお一人。
1971年(昭和46年)、27歳の時、家具で起業。以来、工夫に工夫、既製の概念に捉われず、創造力を発揮して、今は家具・インテリア日本一の座を築き上げた。
最初は夫婦2人で店をオープン。本人は口下手で、「女房が話すほうが得意だったので、営業は女房に任せ、自分は仕入れなどを担当してやってきた」と似鳥さんは語る。
夫婦分業でのスタート。今は海外を入れて約1000店の営業規模に拡大。グループ従業員数は5万人以上に膨れ上がり、グローバル企業となった。
似鳥さんの生き方は、目標完遂まで、決して諦めない、逃げないというもの。いいモノをつくる─という経営理念は、創業当初、流通の師・渥美俊一氏のミッションに参加して、米国の産業界をよく視察するなどして固まった。
顧客のニーズに応えるとは何か─という視点。質のいいものを、リーズナブルなお値段で提供していくことが大事と、自らモノづくりを手がけることを決意。
ベトナム、タイなどに工場を作った当時、円高下で日本の産業界は苦しめられたが、ニトリ経営は海外から製品を輸入する形で〝円高に強い〟会社の異名を取った。
今は、円安になり、同社にとっては〝逆境〟だが「さらに工夫を重ねていきます」と本人は意気軒高。逆境下での工夫が続く。
「店づくり、人づくり、商品づくり」が経営の本道として、〝つくる〟ことにこだわる似鳥さん。初志貫徹の人は逆境下でも強い。
後藤新平の言葉に…
混沌・混迷状況からは、また新たな時代の開拓者が現れる。
関東大震災(1923=大正12年)後の都市整備で力を発揮した後藤新平(1857―1929)も、その内の一人。
日比谷公園、日比谷通り、靖国通り、昭和通りなどのインフラ整備や防災に尽くした人物。内務大臣や外務大臣、それに拓殖大学第3代学長やボーイスカウト日本連盟初代総裁も務めた教育者でもある。
その後藤が若い世代に語った言葉がある。
「人のお世話にならぬよう、人のお世話をするよう、そして報いを求めぬよう」という言葉。
明治維新、そして、日清・日露戦争後、さらには台湾開拓など、時代の転換期に活躍。『自助・共助・公助』の精神を広げたリーダーであった。
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