【社論】日本の政治に課された命題は重い!
財界オンライン / 2024年11月13日 7時0分
国民の審判を受けて
信なくば立たず─。先の衆院選において、自民・公明両党が過半数割れとなった。15年前、当時の麻生太郎政権が大敗し、民主党(当時)に政権を明け渡した。その時と同じような緊張感が政治に走る。
石破茂首相の自民党の議席数は191議席。公明党の24議席を含めても215議席で、過半数の233には届かない。非公認・無所属を含めてもなお、政権運営は盤石とは言えない状況(10月28日現在)。
今回の選挙では〝裏金〟が最大の争点となって自民党は大敗。野党の立憲民主党は大幅に議席を伸ばし、148となった。野田佳彦代表が政権交代を最大の政治改革と位置付けたのが奏功した形だが、政治の流動化は当分続く。
日本の課題は文字通り山積している。〝失われた30年〟からの完全脱却はできておらず、人口減、少子化・高齢化の中で社会保障(医療・年金・介護)改革をどう進めていくのか。また、子育て、高校までの教育費の無償化などは与野党揃って推し進めようとしているが、その財源はどう図るのか。
いわゆるバラマキと言われる政策はオンパレードだが、肝心の財源については、どの政治家も触れたがらない。財源は経済成長あっての財源である。国債発行がGDP(国内総生産)の約2.5倍に達する中で、財政健全化も当面の最大課題の1つ。国債は無限に拡大・発行できるものではないということも肝に銘じておくべきである。
今、地球全体が危機に覆われている中で…
何より、日本の安全保障をいかに担保するかという命題。ロシアの侵略から始まったウクライナ戦争は約2年続き、イスラエルとイスラム過激組織・ハマスの戦いはイスラエルとイランの戦闘にまで拡大。さらには、北朝鮮がウクライナ戦争に〝参戦〟するなどして国際情勢は緊迫化している。
このことは東アジア情勢にも多大な影響を与える。韓国は北朝鮮の動きに早速反発しており、北朝鮮と韓国双方にも緊張感が走る。一方、中国・習近平政権は台湾統一を公言しており、台湾有事にどう対応するかも日本にとって大きな課題となる。
先の大戦終結から79年、約80年が経つ。国際平和の確立を謳った国連(国際連合)は弱体化し、安全保障理事会は中国の存在もあって機能を喪失。そういう状況下、BRICSの台頭に加えて、ロシアの行動にポーランドやハンガリーなど一部の旧東欧諸国が同調する動きもある。まさに世界は流動的である。
新しい国際秩序づくりを誰が担うのか─。日本は日米同盟を軸にし、中国・ロシアなど専制国家とは違う体制を選択。米中対立構図の中、新・国際秩序を構築する上で、日本への信頼は比較的高い。その日本の信頼をさらに高めるために何をすべきかという政治的課題だ。
経済力では世界第4位に転落しながらも、元来、共存共栄を図る日本の考え方は各国の信頼を引き寄せる。分断・分裂という時代の中で、日本に世界をつなぐ役割が求められている。
今回の総選挙では、そうした日本の選択に触れる議論がほとんどなかった。政治とカネの問題は長年の課題。与党・自民党はこの問題に本気で取り組まなければ前に進めない。「国、社会を運営するうえで、政治は方向性を示す役割がある。企業は所得再分配の原資を生み出すという使命。国民にも生きていく上での権利と義務がある」と国と企業、そして国民三者の関係性を指摘する声もある。
時代の転換期の折、世界の中の日本という視点を失わず、当面の試練と同時に乗り越えていく覚悟と使命が必要。そしてまた、経済人も政治改革の1つとして企業献金問題が提起されているだけに、『政治と経済の関係』を真剣に考える時である。
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