日本は「華夷(かい)秩序」を重んじる中国にどう向き合うか? 答える人 拓殖大学顧問・渡辺利夫
財界オンライン / 2024年11月7日 18時0分
「中国には周辺諸国と対等な関係だという考えはない」と語るのは、アジア研究の泰斗・渡辺氏。近年、日本周辺で中国軍の活動が活発化し、東シナ海情勢は緊迫するばかり。そうした中、渡辺氏は、中国では近年、「中国崛起(くっき)」という言葉が使われていると指摘。日本語で「中国台頭」や「中国勃興」と訳されるこの言葉が、中国国内で飛び交う理由とは何なのか。中国の現状を探ると―─。
「中国崛起(くっき)」という言葉が出てくる背景とは?
─ 台湾有事への懸念が高まる中で、今の中国の現状をどのように受け止めていますか。
渡辺 一言で言うと、本当に付き合いにくくなってきたように思います。
BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎の提言「ポスト岸田の経済課題」
2000年代に入った頃から中国では「中国崛起(くっき)」という言葉をよく使うようになりました。日本では中国台頭とか中国勃興と訳されることが多いのですが、よその国が中国について言うのなら構いませんが、これを自ら言い出していることが問題だと思うんですね。
中国はこの百何十年、アヘン戦争や日清戦争での敗北といった屈辱を嘗めさせられ、中華人民共和国の設立以降も大躍進政策の失敗、プロレタリア文化大革命、天安門事件があったりして、一刻だに政情安定してこなかったわけです。
しかし、鄧小平による改革・開放政策の採用以来、成長の波に乗り、経済が勃興期に入った。まさに崛起というにふさわしい高揚の時代を迎えたのだと思います。
─ 自信を持ってきたということですね。
渡辺 ええ。習近平政権が誕生してから、「中華民族の偉大なる復興」を唱え、愛国主義的な動きが強まっています。
最近、中国では「漢服復興運動」と言いまして、若者がかつて中国映画で見たような漢や唐の時代の服を着て、身を正し、礼節を重んじ、漢や唐の偉大なる文化を回顧し、屈辱に満ちた近代史を克服しようと叫びつつ街を練り歩いています。愛国主義的なナショナリズム運動です。
また、「国潮熱」と言って、買い物をする時は国産品、中国製品を買いなさいと。スマートフォンや化粧品は中国ブランドのものを優先的に買い付けようという動きも出ています。
─ なるほど。大手化粧品会社が中国で苦戦しているのは、そういう運動も背景にあるんですね。
渡辺 そういうことだと思います。そこにあるのは「天朝」観念の復興です。
中国は儒教が国教化された漢代以降、皇帝という絶対権力者が宇宙の主催者である〝天〟から命令を受け、有徳の〝天子〟として天下に君臨してきた。この天子の朝廷が〝天朝〟であり、天子の威徳の及ぶ実効的な支配地域が中華(中原)と呼ばれる中心域でした。
現代の天朝がどこかと言ったら「中南海」です。中国共産党幹部の牙城です。共産党の権力の中枢にいる7人の政治局常務委員、その外縁に20人近い政治局委員がいて、これが共産党の権力中枢です。
習近平一強体制になった今、この二十数人の権力中枢幹部は全て習近平国家主席派。反習近平はいません。習近平国家主席は過去のいずれの王朝の皇帝をもしのぐ強権をもって、天朝をけん引する皇帝になっていくと思われます。
続くは本誌で
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