【倉本聰:富良野風話】バンザイ!
財界オンライン / 2024年11月13日 18時0分
以前もどこかで書いた気がする。同じこのコラムに書いたのかもしれない。齢を重ねて物忘れがひどくなっているし、いくら書いても改まらないのだから、くり返し書いても仕方あるまい。衆議院が解散して議員たちが、声をそろえてバンザイ、バンザイと叫ぶ、何とも判らないあの不思議な慣例についてである。
見ていると、どうも野党は叫ばず、与党が全員で叫んでいるように見えるのだがちがうか。とすると益々意味が判らない。
広辞苑で引くと、万才とは①長い年月。よろずよ②いつまでも生きること。いつまでも栄えること③めでたいこと。祝うべきこと④貴人の死を忌んで言う語⑤祝福の意を表すため両手をあげて唱える語⑥転じて、お手上げの状態。すなわち物事に失敗したり、どうにもならない状態になったりすることをいう語、とあって、この中で辛くも相当するのは⑥のお手上げ状態、ということかと思われるが、それにしては両手をあげて叫んでいる連中の表情が、どこか満足気でうれしそうだ。
僕ら戦前生まれの後期高齢者は、あの忌まわしい戦争の時代、幼稚園から小学生の時代を過ごし、先生・先輩の命じるままに、何度この呪文を叫ばされたことか。いま考えると、この呪文は、主に、めでたい時に叫ぶ言葉であって、悲しい時の景気づけの言葉ではなかった気がする。敗戦が決まったとき、僕らはバンザイとは叫ばなかった気がする。
なのに今回の解散総選挙のように、裏金問題で内閣が追いつめられ、揚句、衆議院が解散に追いこまれたという時に、日本を動かす知性の塊である筈の良い齢をした議員の諸氏が、両手をあげて声を揃え、バンザイ、バンザイと大声をあげるのは、狂ったとしか思えない。
大体、あの馬鹿々々しい三唱は、誰に向かってのバンザイであるのか。国民に向かってのバンザイであるのか。それとも同僚議員に対して、さぁまた名の売れるチャンスだぞ、お祭りさわぎができるンだぞ、バンザイ!という、そういう意味でのバンザイなのか。どう考えても、そうとしかとれない。
一つの選挙にかかる費用がどれ程かかるのか知らないが、いずれにしても国費から出されているにちがいないし、それは我々の生活費を削って徴収されている税金から出されているものにちがいあるまい。そういう庶民の血税を使っての選挙戦で、与党候補も野党候補もよくまァ恥ずかしくもなく減税などという言葉を大声で叫べるものである。大体、投票に行くための時間の浪費だって庶民にとっては全く迷惑なことなのである。
解散選挙をするならば、公僕たる議員たちは、かつて自分たちを選んでくれた国民に対し、バンザイという前に、まず謝るべきが筋ではないかと僕は思う。折角選んで下さったのにゴメンナサイ、ゴメンナサイと、ゴメンの三唱を叫ぶべきである。
【倉本 聰:富良野風話】一枚の絵
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