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サクラパックス社長・橋本淳が語る「北陸・富山から段ボールで社会課題の解決を」

財界オンライン / 2024年11月14日 7時0分

たかが段ボール、されど段ボール─。我々の生活に溶け込んでいる段ボールですが、実は社会課題を解決できるという大きな可能性を秘めています。

 富山県に本社を置く当社には同県と石川県、新潟県に工場があります。段ボール産業は典型的な内需産業で、各地の地場企業がシェアを占めています。段ボールの商圏は半径100キロ程度しかありません。しかも、リサイクル率が約95%という素材であり、非常に安価。そのため、遠方に運ぼうとすると運賃の方が高くなってしまうからです。

 そんな北陸3県で当社は圧倒的な信頼を寄せていただいています。創業から77年が経ちますが、その間、北陸のお客様の細かなニーズに徹底的に応えてきたからです。当社の場合、大半が受注生産です。富山なら薬品やアルミ建材に関する箱、新潟では米菓、石川では精密機器といった具合に、各商品に合わせた段ボールを提供してきました。

 例えば、パソコンやテレビの梱包箱。それまでは緩衝材として発泡スチロールが使われているケースが多かったのですが、最近では段ボールの緩衝材が一体となった梱包箱を提案しています。他にも持ち手に特別な設計を施し、重いものを持っても軽く感じるものもあります。

 段ボールは非常に有効な素材です。小型軽量でサイズフリー。省資源かつリサイクルにも適しており、カッター1つで簡単に開封できる利便性もあります。段ボールは紙でできていますからSDGsにもつながります。その中で当社は段ボールに付加価値を生み出しています。それができるのも、当社には包装設計を行う設計士が10人以上いるからです。大手企業でもこれだけの人数はいません。

 では、そんな段ボールをどのようにして社会課題の解決につなげることができるのか。最も大きな期待が寄せられるのが「2024年物流問題」です。この問題については、当社のみならず、様々な段ボールメーカーが知恵を捻り出しています。

 例えば当社では作業の効率化や作業負担の軽減を目指し、パットがなくても底が丈夫な段ボールや片手でサッと持ち上げることができるように3つの穴を空けた段ボールなどを開発しています。また、木箱を紙製の箱に置き換えることで、重量を約4分の1に減らせて積載効率を上げる提案も行っています。

 これらは当社の設計力を生かした商品になります。その意味では、当社は単なる段ボールメーカーではなく、包装材も含めたお客様の商品を安全かつ効率的に、また省資源で輸送するためのトータルパッケージメーカーと言えるでしょう。

 段ボールは末端商材であり、主役ではありません。したがって、コストダウンの対象になりがちです。それでも我々は段ボールが秘めている可能性を追求し続けているのです。

 冒頭に申し上げたように、段ボールは内需が大半ですから、全国の段ボールの生産量・販売量は国内総生産とほとんど同じ動きをします。今後、人口減少が予測される中、段ボール自体の販売が落ち込んでも対応できる収益性がある企業体を目指していくことが私の使命です。

 とはいえ、まずは段ボールの付加価値向上に力を入れていくつもりです。なぜなら段ボールには力があるからです。2016年の熊本地震で被害を受けた熊本城の再建を支援するため、段ボールで組み立て式のミニチュアの熊本城を販売しました。お客様はもちろん、被災地の方々にも喜んでいただけました。

 段ボールを社会貢献にも寄与するものにしていきたいです。

2024年度『経営者のための10冊』 企業アドバイザー(元JBCCホールディングス会長)・石黒和義

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