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戸田建設が描く新・ゼネコン像 東京・京橋で新本社ビル建設を機に

財界オンライン / 2024年11月26日 16時30分

2024年11月2日に開業した戸田建設の本社ビル「TODA BUILDING」 撮影:冨田了平

「アートとビジネスが 交錯する場として」


「『TODA BUILDING』の竣工で新たな一歩を踏み出した。100年に一度の大きな事業。先人達の思いを現在、未来の従業員につなげるために、20年ほど前から計画を進めてきた」ーこう話すのは、戸田建設社長の大谷清介氏。

 2024年11月2日、戸田建設の新本社ビル「TODA BUILDING」が開業した。このビルは東京・京橋で24年9月30日に竣工。地下3階、地上28階建て、高さ約165メートルの超高層複合ビル。旧本社ビルの建て替え工事で、創業時から数えて5代目のビルとなる。

 このビルの大きな特徴は、隣接する「ミュージアムタワー京橋」、このビルに入居する「アーティゾン美術館」(19年にブリヂストン美術館から改称)と共同で「まちに開かれた、芸術・文化拠点の形成」を目指していること。このテーマで「特区制度」を活用している。

 1階から6階を、芸術文化施設と商業施設で構成。ビルの共用部でオフィスワーカーと、芸術文化施設を利用する人々が交流することを想定している。「アートとビジネスが交錯する場を提供することで、刺激的な体感ができるのではないか」(大谷氏)

 京橋は歴史的に見ても、芸術文化との関係が深い場所。例えば、『東海道五十三次』の歌川広重を始めとする絵師が住んだ場所。さらには大正時代には芸術家・美食家として知られる北大路魯山人が美術店「大雅堂藝術店」を開業。現在も東仲通り周辺の「骨董通り」には、100を超える古美術商やギャラリーが軒を連ねる。

 この歴史的背景も踏まえて今回、戸田建設は「アート事業」を手掛けている。1階、2階の共用部ではパブリックアートプログラムを運営し、新進アーティストなどに作品発表の場を提供している他、3階にはギャラリーコンプレックスを設置し、4つのギャラリーを誘致して、現代アートの発信拠点とする。

 さらに6階にはアニメ、マンガ、音楽などのカルチャーや現代アート、デザインなどをテーマにしたミュージアム「CREATIVE MUSEUM TOKYO」を設置している。

 戸田建設は、このアート事業を芸術文化への貢献であると同時に、このビルで展開する不動産事業の付加価値と捉えている。

 アート事業を手掛ける、戸田建設戦略事業本部国内投資開発統括部次長の小林彩子氏は「不動産は内装などを頻繁に更新するのは難しいが、パブリックアートを交換することで、見慣れた不動産がガラッと刷新されるという効果を期待している」と話す。実際、この付加価値に賛同して味の素、コスモエネルギーホールディングスという大企業が、本社を移転して入居することを決めている。

 戸田建設が持つ建築技術を注ぎ込んだビルでもある。特に「コアウォール免震構造」を採用し、防災性能を高めている。これは1階の床下に設けた免震層と、建物上部中央に設けた「連層耐震壁」(コアウォール)の組み合わせで、建物の揺れと変形を大幅に低減するもの。「現時点で、日本でも有数の耐震性能」と大谷氏は話す。

 ビルとしての耐震性に加え、中央通り側の広場の免震性も高いことから、災害が発生した際には帰宅困難者の一時滞在場所となるなど、地域の防災対応力の向上にも一役買う。


事業構造が変化する中で

 コロナ禍を経て、オフィスのあり方が問い直されている。リモートワークが一定の普及を見せた一方で、今はIT企業であっても、新たなものを生み出すためのコミュニケーションを深めるにはオフィスが重要だということで、出社を奨励することも増えている。そうした流れの中で大谷氏は「オフィスの更新需要は高まっている」と話す。

 その意味で、戸田建設としては、今回初めて導入した、前述のコアウォール免震構造のような技術を、今後建築を手掛けるビルの付加価値として横展開できるかも問われる。

 深刻化する建設業界の人手不足への対応も重要。大手、準大手ともに、人材の奪い合いの様相を呈しており、テレビCMを含め、各社が知恵を絞っている。その意味で京橋という好立地の本社ビルを持つ強みをアピールしたい考え。

 さらに、ビルの8階に戸田建設自身のミュージアム「TODA CREATIVE LAB "TODAtte?"(トダッテ)」を開設し、建設業の過去・現在・未来を発信することにしているのは、自社や業界の魅力を広く一般の人々に伝える狙いがある。

 そして、戸田建設自身の事業の形も変わってきている。主力である建築・土木に加えて、今回のようなアート事業、「洋上風力発電」への取り組みや、いちごを始めとした農業、ロボット導入のコンサルティングなど、これまでとは違う領域に入ってきている。

 大谷氏は「単に建築物をつくるだけでなく、新たにお客様にとっての文化を構築できることを目指していくことによって、企業として求められるものに応えることができる」と話す。

 今回のTODA BUILDINGの開業は、単に建設会社の本社が建て替わっただけでなく、京橋という街の歴史と新たな文化の発信という意味もある。戸田建設には、このビルの開業を自社の力にすると同時に、街の新たな魅力づくりに生かすことが求められている。

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