宮崎県知事・河野俊嗣の「宮崎は宝の山。子ども・若者、グリーン成長、スポーツ観光で日本一を目指す!」
財界オンライン / 2025年1月20日 15時0分
「宮崎には現在すでにあるもので国全体に貢献できる、誇らしいものがたくさんある」と宮崎県知事。農業・畜産・林業分野では日本トップクラスの成果を上げる同県だが、一方でその跡継ぎ問題や、県民の高齢化などの課題も抱える。その中で河野氏は「子ども・若者」「グリーン成長」「スポーツ観光」の分野で日本一への挑戦プロジェクトを推進。103万円の壁問題で地方税収が減るとも言われている中で、地方は自ら財源を確保していく工夫が求められる。宮崎県における具体的な施策とは─。
手厚い子育て政策を!
─ 河野知事は2011年に初当選して現在4期目ですね。県政においていま力を入れているのはどういった点ですか。
河野 宮崎県では、コロナ禍や物価高から県民生活の回復を図るとともに、単なる回復にとどまることなく、さらに高みを目指して未来を切り拓いていくため、「日本一挑戦プロジェクト」に取り組んでいます。
これは、本県が強みを有する分野をさらに伸ばして日本一を目指すもので、具体的には、恵まれた子育て環境や、全国トップクラスの農林業、優れたスポーツ環境を生かし、「子ども・若者」、「グリーン成長」、「スポーツ観光」の3つの分野で推進しています。
それぞれ、日本一を目指す目標値を定め、30億円の基金を設置し、重点的・集中的に取り組んでいるところです。
─ 「子ども・若者」の部分では少子化が全国的な課題となっています。宮崎県での独自の政策はありますか。
河野 宮崎県の合計特殊出生率は、沖縄県に次いで全国2位です。今後は1位を目指そう!と、高い目標を掲げて取り組んでいます。
急速に進む少子化の背景として、全国的な傾向ですが、コロナ禍による結婚の数の激減が挙げられます。本県では、コロナ前の婚姻数は年間4,600組でしたが、コロナ禍により令和3年に3,800組に減少しました。
5類に移行した昨年は回復を期待したものの、さらに3,500組にまで減少しています。
そのため、まずは結婚に対するポジティブなイメージを発信するため、本県出身のタレントを出逢いや結婚を応援するアンバサダーに任命して、気運醸成を図っています。
また、市町村や企業と連携して結婚支援に取り組むため、結婚支援コンシェルジュを配置しました。
また、結婚後についても、夫の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生割合が高くなることから、夫が家事も子育てもする「共働き・共育て」ができるような社会づくりに力を入れて取り組んでいます。
─ 具体的には、どういった取り組みをしていますか。
河野 今年度から、男性の育児休業取得を支援するため、一事業者あたり最大100万円の奨励金を用意しました。代替人員を雇ったり、育休取得者の同所属の従業員に手当を支給したりする会社を財政的に支援することにより、男性の育児休業取得を促進します。県として後押しするので、ぜひ中小企業にも積極的に取り組んでほしいというメッセージです。
─ 子どもを産まない理由は、一般的には将来への不安が大きいということが言われていますが、その点についてはどう考えていますか。
河野 そうですね。結婚をためらう理由として、所得の問題が指摘されています。非正規雇用の増加や、物価高に伴う実質賃金のマイナスなどです。
これについては、引き続き、着実に経済対策や賃上げに取り組む必要があると考えています。
一方、宮崎の合計特殊出生率が高い理由や今後の伸びしろを探るため、専門家に分析いただいたところ、全国と比較して、宮崎では結婚された方が第2子、第3子を産む割合が高いという結果が出ました。両親や隣近所など子育てのサポートを受けやすい地域事情や、物価や生計費の安さなど、子育てしやすい環境がその背景にあるものと思われます。
そのため、コロナ禍の影響からの回復という点も含め、まずは結婚を促す取り組みに力を入れているところです。
─ まず前提として結婚にたどり着くことが重要だということですね。
河野 はい。その一方で、第1子が生まれる率が全国と比べて低く、その理由として、女性も含めた若い世代の進学・就職による県外流出が顕著であることが挙げられます。これは、近年、本県の人口が年平均1000人以上の社会減となっている主な要因です。
そのため、社会減対策として、これまで県外に進学・就職していた若者をなるべく県内に留める対策を強化しています。たとえば、高校卒業後の県内就職率は一時、全国最低の54%でしたが、6割強にまで上昇しています。
また、県外に転出された方や県外出身の方が、UIJターンや移住で宮崎に戻るないし来てもらうという取り組みも強化しており、これらの取り組みを通じて社会減ゼロを目指しています。
─ そうした施策を含めて、どう若い人の移住を増やしていくかが今後の課題だと。
河野 はい。実際、データの上でも回復傾向にあるのですが、そこには特殊な要因も含まれています。
都城市が手厚い移住支援策と子育て支援策に取り組んでいて、大幅な社会増が起きているのです。自然増減では、やはり亡くなる方が多いので自然減となっていますが、それを社会増でカバーし、市町村では都城市だけ人口増加に転じています。
─ 都城市で何か特別な政策をやっているのですか。
河野 子どものいる家族が都城市の中山間地域に移住した場合、最大500万円を支給する支援策を打ち出しました。
都城市は、ふるさと納税の寄附受入額が200億円弱で、市町村単位で日本一となっています。この財源を、移住を含めた子育て施策に活用しているのです。
─ 500万円の支給は大きいですね。
河野 はい。それに加え、子育てに関する3つの完全無料化として、令和5年度から「保育料の無料化」「こども医療費の無料化(中学生まで)」「妊産婦検診の無料化」を実施しています。
近隣から人を集めているのではないかという見方もされますが、実際は県外からの移住者が6割を占めています。
移住者の急増により、保育園の受け入れ体制の充実などの課題はあるものの、若い世代も多く、出生数の増加に結びつくことが期待されます。
このような都城市の取り組みもあり、昨年度の移住相談件数は本県が全国一位となりました。注目度が高まり、本県への移住に追い風が吹いています。
「5つのS」を強化していく
─ 知事は「食」「スポーツ」「自然」「森林」「神話」の「5つのS」を成長戦略にするということをずっと訴えてきていますが、進捗状況はどうですか。
河野 スポーツ分野では、やはりゴルフ環境が強みです。昨年、国内で初めて「アジアゴルフツーリズムコンベンション」というゴルフツーリズムの商談会を中心とした大会が宮崎で開催されました。大会を通じて本県のゴルフ環境が高く評価され、その後、東アジアの優秀目的地に選出されています。
県内には27のゴルフ場があるのですが、施設自体の魅力に加え、市街地にもゴルフ場にも近い空港からのアクセスの良さが高く評価されています。
また、「ニシタチ(西橘通り)」も含め、食べ物がおいしく、コストパフォーマンスがいい、そういったトータルの環境が高い評価に結びつきました。
今後、自信を持ってゴルフツーリズムを強化していきます。
─ 飛行機だと韓国からも近いのでインバウンド(訪日観光客)も増えていますか。
河野 増えています。12月18日より、韓国ソウルからの直行便が毎日(デイリー)運航になるので、冬場のゴルフのお客様が、さらに多く来られるようになります。韓国は寒い時期にゴルフができないので日本に目が向いていて、地理的にも絶好の場所として宮崎の需要が高まっているのです。
また、先日韓国に行って話を聞いたのですが、韓国国民の対日感情が、過去最高に良くなっています。現在、海外からの訪日客で1番多いのは韓国人で、2023年は約700万人。ついに中国を抜きました。宮崎にも随分と来ていただいています。
それと、今後楽しみなのは、今年ユネスコの無形文化遺産に登録された「伝統的な酒造り」です。焼酎、日本酒、泡盛、みりんなどの酒造りが、12月に登録されました。
これによりわが県の特産品である焼酎が世界の宝になるわけで、よりいっそう力を入れてしっかりアピールしていきたいですね。
─ それもうまくいけば追い風になりますね。改めて、知事として宮崎のいいところはどういったところだと思いますか。
河野 宮崎は、神楽をはじめ、昔ながらのものが大切に守られている、かけがえのない土地で、日本のふるさとだと思います。豊かな自然や、おいしい食もあり、そして何よりも穏やかで優しく、訪れた人を温かく受け入れる県民性が魅力です。
高速道路や新幹線などは、人口集積や立地条件の関係で、都市部と比べると後れをとってしまった点はあると思います。しかし、だからこそ大切に守られてきたものも多いのです。それをもっと生かしていくことが大事だと考えています。 日本1プロジェクトを!
─ 宮崎にとって農業や畜産は大事な産業ですね。エネルギーコストが上がって農家や酪農家の経営難が言われていますが、これはどう考えますか。
河野 そうですね。物価高の影響で飼料、肥料、資材価格などが高騰しています。全国的な課題ですが、農業は価格転嫁が難しいという問題があります。
物価高が進む中で、少しでも野菜や米の値段が上がると、生活に直結するので、「大変だ!」と、すぐにメディアで騒がれます。農家の視点に立てば、今まで採算が取れるか取れないかの状態で経営をしてきたので、値上げをしたとしても農家の収入は増えていないのが実態です。
そのため、消費者の理解を得ながら、これだけ高品質で安全な食料が供給されているわけですから、適正価格、再生産可能な価格を受け入れていただくことが重要です。
国では、食料・農業・農村基本法が改正され、5カ年計画で集中的に改革していく方針が示されています。江藤農林水産大臣を筆頭に、予算の増額に向けて動いていただいています。
─ キーワードの1つは、原材料価格を反映した適正価格ですね。
河野 はい、そうです。 それから、和牛については、令和3年度までの子牛価格は1頭70万円を超えていましたが、現在は、飼料が高騰する中にあって、50万円を下回る厳しい状況になっています。
物価高のため消費者が鶏肉や豚肉を選ぶようになり、牛肉の消費が落ち込み、子牛価格が低迷しています。経済が回復すれば、牛肉の人気は根強いものがありますし、海外の輸出は伸びているので、なんとか消費を活性化させたいと考えています。
─ 最近、ハラール対応食肉処理施設(イスラム法において合法とされる食肉処理が可能な施設)もできたと聞いています。
河野 はい。これによってイスラム圏への輸出の道が開け、とても楽しみです。まずはカタールなど中東へ、それからインドネシア、マレーシアなどアジアのマーケットも極めて大きいので、そこに積極的に進出していきたいですね。
ハラール対応食肉処理施設は近隣に養豚場があったらダメといった基準があり、養豚が盛んな宮崎では難しかったのですが、民間事業者の熱心な取り組みもあって西都市にハラール対応食肉処理施設が完成。そこを拠点に、イスラム圏をはじめ海外輸出をさらに伸ばします。
─ いろいろ打つ手は、探せばあるということですね。宮崎県民に知事から訴えていくメッセージは何かありますか。
河野 そうですね。少子高齢化、人口減少が加速する中で、宮崎は合計特殊出生率が高いとか、食料安全保障が課題となる中、農業産出額が全国5位前後とか、本県は喫緊の国家的課題に貢献できる力を有した地域だと考えます。だからこそ今、3つの「日本一挑戦プロジェクト」に注力しています。
一方、刺激を求める若者からは、新幹線がない、テレビの民放が2局しかない、遊びに行くところがないといった不満をよく聞きます。
私としては、「ない・ない・ない」といった見方をするのではなく、現在すでにあるもので、しっかりと国全体に貢献できる誇らしいものが宮崎にはたくさんあるんだよと、若い世代に話すようにしています。
─ 「ない」ことに目を向けるのではなく「ある」ことに気づくということが大事だと。
河野 はい。それから「賃金が安い」という指摘もあります。確かに都市部と比べて見かけの賃金は安いかもしれませんが、生計費、物価は全国でもかなり安い方ですし、通勤通学に要する時間は1番短いのです。
単に賃金が高い低いというだけではなく、生活コストが低く、暮らしやすいという良さがあるんだよと説明するのですが、なかなかすぐに若い世代には伝わらない。でも、実際に県外に出てみて、初めて宮崎の良さに気付くという人は多いですね。
宮崎は宝の山で、県民にはそのような誇りを持ってほしいと思います。社会への貢献度の高さや、日常で当たり前に享受している豊かさに気づいてもらえるよう、知事として今後も根気強く訴えていきたいと考えています。
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