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生き方・働き方改革で人気急上昇  最大手ニチレイフーズの冷凍食品進化論

財界オンライン / 2025年1月21日 15時0分

日本で初めて"炒めた"炒飯を開発以来売上NO.1の地位を保つ

コロナ禍後、急速拡大の背景


「今年度も冷凍食品の売上は過去最高になる。人口減でも今後も市場は伸び続けるとみている」

 こう語るのはニチレイフーズのライン&マーケティング戦略部商品第一部長の城戸俊治氏。  現在冷凍食品市場は全体で7500億円余、過去5年間で1500億円も伸長している。起爆剤となったのはコロナ禍。行動制限により人々が家で食事をすることが増え、簡便性、保存性の高さから、今まで冷凍食品を食べていなかった層に急速に浸透した。家電メーカーには、冷蔵庫の冷凍スペースを増やしてほしいという要望も増加している。冷凍食品はなぜコロナ禍以降、急伸長しているのか?

「ひと昔、冷凍食品は美味しくないという評価をしていた人が、コロナ禍をきっかけに冷凍食品を手に取ることが増え、冷凍食品の美味しさを知ってもらえる機会となった。コロナ禍以降も、物価高で消費者の節約志向が続く中で、働く人でランチ代節約で外食を控えてお弁当を持参する人も一定数存在する。また、女性の社会進出により時間を節約したい人々に寄り添うアイテムとして、冷凍食品の位置づけが変化している」と同氏。業界関係者は「油が高騰し家庭で揚げ物をしなくなり、そこに冷凍食品の唐揚げが代用されるようになった。また、節約や時短で余った食材や作り置き料理の冷凍が身近になるなど、さまざまな背景が重なって、冷凍食品全体を肯定的に見るという人々の価値観が変わってきたことも大きい」と分析する。

 ニチレイグループの24年3月期の連結売上高は6801億円で、5年前の19年3月期から1000億円売上を伸ばしている。加工食品はグループ全体の4割を占め、その製造販売はニチレイフーズが担う。冷凍食品業界ではニチレイフーズが首位で味の素冷凍食品、ニッスイが後につづく。

 大きな市場トレンドでは、個食ニーズの高まりを受け、主食とおかずが同時にレンジ調理可能なワンプレート型食品なども伸長。これまで冷凍食品はお弁当のおかずとして家族向け商品が多かったが、3食のうちの一食を冷凍食品で代用するという家庭も増えている。

 加えて冷凍食品の多様化も進む。レンジで冷たく仕上げる『冷やし中華』や、汁あり・汁なしが気分によって選べるデュアル調理可能の『本当に旨い担々麺』といった、こんなことが電子レンジで可能になったのかと、その進化に驚きや楽しさを感じさせる商品も続出。

 生き方、働き方改革、コスパ、タイパによる食の外部化は高まっており、冷凍食品業界には今まさに追い風が吹いている。


商品を支える研究開発と味覚評価制度


 冷凍食品の伸長には環境要因も大きいが、どんなに便利でも美味しくなければ広まらない。美味しいと言われるようになる今日まで、何十年も研究を重ね、美味しさを追求し改良してきた見えない同社の苦労がある。

「食べて美味しいと思う感動を冷凍食品で届けられないか。その一心で"ほんのちょっとのその差にこだわる"というのがわれわれのものづくりのモットーです」と城戸氏。

 同社のこだわりは、良い商品をつくるためにコストをかけても自社で内製を厭わないということ。商品によっては使う出汁も鶏ガラから取ることから始める。すべて電子レンジで温めた時に一番良い仕上がりとなるよう逆算し、どう調理工程を組むかが商品開発の腕の見せ所。

 例えば同社の代表商品『本格炒め炒飯®』は冷凍炒飯のパイオニアであり、発売時から23年連続売上NO.1で、世界最大の炒飯ブランドとしてギネス認定もされた商品。この商品の美味しさの秘密は、焼豚を内製していることにある。肉のゴロゴロ感と、炒めた時に焼豚の油が炒飯に回るように自家製の焼豚を使用している。

 城戸氏は「外部から出来たものを調達することは簡単だが、それだと自分たちの理想とする商品がつくれない」と話す。比較対象は他社の冷凍食品ではなくプロの料理人が手作りした炒飯におき、顧客を驚かせ感動させる商品づくりを追求する。

『香ばし麺の五目あんかけ焼そば』においても、麺は焦げ目も再現し、麺を持ち上げたときに食べやすい長さ、茹で加減、すべてが計算されている。

「わたしたち商品開発の人間は5年先を生きているつもりで、何が人々に求められるかを見据え研究を重ねている。かつ美味しさは電子レンジで温めたときにプロの料理人がつくるレベルにどこまで近づけるかが勝負」と城戸氏。

 同社の商品づくりを支えるユニークな制度で味覚評価員制度といったものもある。これは味を的確に捉えられる人を社内で選抜し、商品の味の評価をするもの。これも同社のゆるぎない商品ブランドを支えるひとつの仕組みである。

 冷凍食品業界には追い風が吹いているものの、ブランド認知はまだまだ浸透していないという現実もある。廉価版、PB商品もある中で、結局価格競争を引き起こしていることも大きな課題。

「たとえばビールでは消費者は自分に合うブランドを決めている。われわれも、"炒飯を食べるなら『本格炒め炒飯®』でないと嫌だ"と言ってもらえるブランドにしていかなければ、冷凍食品は安かろう悪かろうの世界から脱せない」(同)と業界トップメーカーとしての危機感を訴える。

 働く人たちの負担を減らし、生活を手助けする冷凍食品は、更なる地位を獲得していくのだろうか。米、野菜や海鮮物の高騰が続く中で、冷凍食品の安さは大きな魅力の一つ。しかし商品の美味しさがベースになければ価格競争からは脱せない。同社もこのジレンマを抱えながらのバランス経営が求められる。

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