第一生命経済研究所主席エコノミスト・熊野英生が解説「今の成長産業とその次」
財界オンライン / 2024年12月29日 11時30分
しばしば成長産業という言葉が使われる。この成長産業とは一体何の業種を指しているのだろうか。より具体的な業種のことを調べてみたい。調査したのは、経済産業省の「第三次産業活動指数」である。2015年平均の活動指数を100として、より大きくなっている業種が「成長している産業」とみることはできるだろう。
まず、大きな業種区分でみると、①金融業、保険業(122)、②医療、福祉(115)、③情報通信業(108)などが挙げられる(かっこ内は2024年9月の指数)。金融は株式、FX、ビットコインなどを扱うネット証券がここ数年間で成長しているビジネス領域と言える。医療、福祉は高齢化によってニーズが高まった。
次に、もっと細かい分類で業種ごとの変化をみてみた。著しく伸びているのは、公営ギャンブルである。競艇、競輪、オートレース、競馬はそれぞれ15年比で1.4~2.5倍に指数が高伸している。ここでは、政府が住民税非課税世帯等に、何度も給付金をばらまいていることが微妙に作用している。また、こうしたギャンブルはコロナ前後にネット投票で参加できる仕組みをつくり、幅広く遠隔地からもニーズを掘り起こすことに成功した。
次に目立つのはゲームソフト(15年比1.7倍)、ソフトウェア・プロダクト(同1.5倍)である。インターネット関連サービスは急成長分野で、各種サイト運営を支援する事業者も伸びている。さらに、インターネット広告も成長している(同1.7倍)。
こうしたネット系ビジネスの隆盛は、紙媒体の市場を大きく食って、デジタル・シフトする変化を生んでいる。新聞・出版・雑誌や紙媒体広告は軒並み活動指数が低下している。
意外なところでは、運輸業の中に宅配という成長業種がある。15年比で1.3~1.4倍となっている。なぜ、宅配かと言えば、EC取引の拡大があるからだろう。小売業のデジタル・シフトに連動して、デリバリーの需要が拡大したという訳だ。
筆者は、ここから10年後の未来図を想像する。宅配業界は強烈な人手不足である。すでに、中国では自動・自律配送ロボットが実用化されている。道路から個人宅の玄関に荷物を配るという「ラストワンマイル問題」も、ロボットで解決されそうだ。もしかすると日本でも、タクシーの無人運転より先に物流の無人化が進展しそうだ。先日、筆者が驚いたのは、こうしたロボットが家電量販店内を動き回っていたのを見たことだ。以前から、日本の道路交通法が自動化のネックになっている。店内であればその縛りはない。ほかにも羽田空港には車椅子ロボット、警備・案内のロボットが走る。日比谷公園では無人の芝刈機が自動で庭を整備していた。次は、ロボットが人間の役割を代替する活動が成長産業と思える。
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