【2025年をどう占いますか?】答える人 東レ会長・日覺昭廣
財界オンライン / 2025年1月1日 17時0分
素材には社会を変える力がある
─ 東レ会長の日覺昭廣さん、トランプ氏の米大統領再選で世界の分断や混乱は続きそうですが、今後の世界経済の行方をどう予想しますか。
日覺 難しいですね。トランプ氏は気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」離脱や化石燃料への回帰を打ち出していますが、こうしたことを本当に全て実現できるのかどうか。
われわれはサステナブル(持続可能)素材や環境配慮型製品の開発を進めていますが、この辺に対する今までの補助金やサポートが変わってしまうかもしれませんので、ここはどういう形になるのかを見極める必要があると思っています。
もう1つは、トランプ氏は全貿易相手国に対して10~20%、中国に対しては60%の追加関税をかけると主張しています。そうなると、中国も米国に報復関税をかけるでしょうから結局、世界的にインフレになり、景気が完全に失速してしまう可能性がある。これが一番心配です。
─ 当然、世界経済にも影響は出ますね。
日覺 ただ、そうなると、一番ツケを払わされるのは米国の国民だと思いますし、世界中で貿易が非常に難しくなってくる。われわれは世界中に拠点を持っているので、いわゆる地産地消という形で影響をミニマイズしていこうと思っています。
─ 緊張感のある経営が続くわけですが、日本企業の役割はどう考えていきますか。
日覺 現在はAIやDXの時代になって、徹底的に効率化し、スピードを速める方向に向かっています。特に欧米は短期志向が強くなっていますが、われわれ素材産業が革新的なものを開発するには時間がかかります。それこそ何十年という歳月がかかるんです。
そう言うと、時代錯誤もいいところだと言われてしまうんですが、現実に、素材というのは技術の蓄積がないと新しいものはできません。例えば、当社の炭素繊維は米ボーイングの「787型機」に主要構造部材として採用されるまで開発から約50年かかっていますし、繊維の細さや形をナノ(ナノは10億分の1)レベルで制御する『NANODESIGN(ナノデザイン)』という複合紡糸技術の開発には、創業から90年以上かけて培ってきた技術が生きています。
20~30年前から繊維は衰退産業だと言われ続けてきましたが、こうした新しい商品を開発できるのは素材の魅力です。当社では「素材には社会を変える力がある」と言っていますが、AIやDXも素材の開発の進歩があったからこそ成り立っています。そういった長期的な視点を持つ日本的な経営を今後も貫きたいと思っています。
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