【2025年をどう占いますか?】答える人 塩野義製薬会長兼社長CEO・手代木功
財界オンライン / 2025年1月5日 11時30分
安全・安心な国産の医薬品をもっと輸出できるモデルに
─ 国産コロナ治療薬を開発した塩野義製薬会長兼社長CEOの手代木功さん。足元の物価高による製薬業界への影響は。
手代木 医薬品には薬価という健康保険法下で償還される最高価格があります。一方で、原材料費は輸入が主になっている中で足元の円安基調かつ物価高がダブルで効いていて、医薬品業界は苦しい状況です。
そのような中で塩野義製薬は2023年度、7%の賃上げを実施しました。賃上げは企業の社会的責任と考えています。また、輸入原材料も少しでも安く買う工夫を重ねています。ただ、償還価格の上限が国が決めている薬価で、ここは簡単に値上げはできませんから、原価率が上がると、どうしても収益の面で厳しくなります。
そういう意味では、国内の生産基盤をどのように維持・発展させていくか。今は非常に難しい局面に立っている状況です。
─ 薬価の問題などは製薬業界共通の大きな課題になっているわけですね。
手代木 私どもは、日本の皆様方のための医薬品は、できる限り日本国内で生産して、品質面などでも安心していただけるような生産体制を整備していきたいと考えています。これは当社に限らず、製薬業界全体が考えていることだと思います。
─ 一部のジェネリック医薬品(後発医薬品)の供給不足が解消されずに社会課題になっています。
手代木 はい。この問題も無関係ではありません。国民の皆様の生活に必須である医薬品のサプライチェーンをいかに安心・安全なものにしていくか。これを貿易問題との関係で言えば、今までとは少し違う切り口での取り組みが必要になってきているようにも思います。
─ 国内の食料自給率は約38%。医薬品の自給率はさらに低いということでしょうか。
手代木 非常に低いです。新しい技術である抗体医薬品には抗がん剤や抗リウマチ薬をはじめ、素晴らしい製品がたくさんあります。それらを国内で生産している工場も徐々に増えていますが、23年段階での医薬品は4.5兆円の輸入超過になっており、これは原油に次いで2位になっています。
それだけ原材料を海外から輸入し、逆に、国内から海外に輸出できている医薬品は少ないということになります。
ただ、日本の薬はアジアなどを中心に品質面では世界でも非常に高く評価されています。それをもっと輸出できるようにしていかなければなりません。外貨を稼ぐことは日本の経済にとって非常に大きいですからね。そういったモデルに変えていけるように努力していきたいと思っています。
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