ラピダスが最先端設備を導入 一方で資金面の不安は尽きず
財界オンライン / 2025年1月22日 11時30分
政府支援は9200億円 国はどこまで関与すべきか
「北海道から全世界に最先端の半導体を届けるための確実な第一歩だ」
ラピダス社長の小池淳義氏は、北海道千歳市で建設中の工場に「EUV露光装置」が搬入されたことを重要な節目だと捉える。
露光はシリコンウエハーに回路を形成する工程。EUVは日本語で「極端紫外線」と呼ばれ、微細な回路の焼き付けに用いられる。ラピダスは回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)の先端半導体を2027年に量産する計画で、それには蘭ASMLが生産するEUV露光装置が欠かせない。
日本での同装置の導入はこれが初めてで、価格は数百億円と言われる。搬入記念式典にはASMLの幹部も登壇し、二人三脚ぶりを強調した。
ただ、小池氏が語るようにEUV装置の搬入は"一歩前進"にすぎず、同社を取り巻く課題は山積したままだ。最たるものが、資金面の不安。すでに政府から9200億円の支援が決まっているものの、量産には5兆円規模を要する。政府は一段の支援に必要な法案を25年の通常国会に提出する方針だが、少数与党で政局が不安定な中、順調に進むのかは疑問が残る。
民間の動きはさらに見通しにくい。
24年秋に3メガバンクと、日本政策投資銀行の計4行が合わせて250億円を出資する方針が伝わったが、ラピダスが必要とする額からは乖離がある。同社に出資する企業からは先端半導体プロジェクトの難易度を念頭に、「これ以上の支援の妥当性を(自社の)株主にどう説明すれば良いのか」と苦悩の声が漏れる。
「最先端技術の開発にはもっと国が関与するべき」という声もあるが、国は果たしてどこまで関与するべきなのか。そのバランスは今後も問われ続ける。
こうした懸念をラピダスが払拭するには、技術面での障壁を乗り越えていくことが必要だ。
もっとも、ラピダスは「数を打てるようにならなければペイしない」(業界関係者)。資金調達に成功しても量産時には歩留まりが厳しく問われる。難路は当面続きそうだ。
第一生命経済研究所主席エコノミスト・熊野英生が解説「今の成長産業とその次」
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