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なんと国内電力使用量は日本全体の約1%! 【イオン】が進める脱炭素戦略

財界オンライン / 2021年7月8日 11時30分

吉田昭夫・イオン社長

再エネ100%の店舗を増やしていく

「われわれの事業活動が環境負荷をかけているのであれば、少なくとも自分たちの責任でゼロにしていく必要がある。需要家として使用する電力規模が大きいので、店舗の電力をいかに減らしていくか。そのために可能な限り省エネをし、自分たちで再生可能エネルギーを作っていくことが大事だと思う」

 こう語るのは、イオン環境・社会貢献部部長の鈴木隆博氏。

 総合スーパー(GMS)や食品スーパー(SM)、ショッピングセンター(SC)、ドラッグストア、コンビニエンスストア、ディスカウントストアまで、幅広い小売り事業を展開するイオングループ。2020年度の営業収益は8兆6039億円と、日本最大の小売りグループだ。

 グループの店舗数は約1万9千店。館内や各店舗で使用する照明や空調の他、食品などを扱う店舗が多く冷蔵・冷凍用に電力を使うため、電力は朝から夜まで消費するケースが多い。

 グループで消費する国内電力使用量は70数億㌔㍗時と、日本全体の約1%を占める。1企業としてはNTTグループと並び、日本最大の電力ユーザーと言っていい。これから日本が脱炭素化を進める上では、大きなカギを握る存在である。

 そのイオンが6月8日に開業したイオンモール川口(埼玉県)は、電気とガスのCO2(二酸化炭素)排出量が実質ゼロのショッピングモール。使用する電気やガスを、東京電力エナジーパートナーや東京ガスから、実質的にCO2が発生しないとみなされる電気や都市ガスを調達する仕組みで、国内大規模商業施設では初めてだ。

 近年、同社では脱炭素社会の実現に向け、全国のモールで再生可能エネルギー100%店舗の取り組みを広げてきた。現時点で、100%再エネで運営しているグループ店舗は、上尾(埼玉県)や福岡など8店。今年度から始まった2025年度までの中期経営計画では、国内150カ所全てのイオンモールで使用する電力を再エネに転換することを目指すと宣言している。

「これは是非とも達成したい。現在は各施設において太陽光発電などを導入して再エネを作り、まずは自分たちで作って賄いたい。それでも足りない分は直接購入するなどで、再エネ100%の店舗を増やしているところ。今は店の敷地内でエネルギーを作ることがメインになっているが、将来的には店舗外の大規模な再エネ開発に参画するなどして、再エネを調達していきたい」(鈴木氏)




 イオンは2018年に『イオン脱炭素ビジョン2050』を策定。2050年に店舗で排出するCO2をゼロにすることを打ち出した。実現に向けては、CO2排出量の約9割が電力由来であることから、店舗使用電力の削減(省エネ)と再エネ転換の両立に取り組んでいる。

 当面の中間目標として、2030年までに国内の店舗で使用する電力の50%を再エネに転換する方針[KN(奈1] 。鈴木氏はイオンモールの再エネ転換に加え、「2030年にイオンタウン約150店舗、イオンリテール約400店を再エネに切り換えることを視野に入れている。これができれば中間目標はクリアできる」と自信を見せる。

 この他、イオンはPPA(電力購入契約)モデルの導入を推進。他の発電事業者がイオンの敷地や店の屋根を借りて、太陽光発電システムを設置し、供給するシステムで、イオンとしては初期投資や管理コストが安価で済むというメリットがある。今後はPPAの導入店舗を約200カ所に拡大する考えだ。

 ただ、課題は再エネ導入にかかるコスト上昇をいかにして抑えるかということ。欧州などと違い、まだまだ日本では再エネの導入コストが高く、企業が再エネを導入すればするほど、コストも高くなってしまうからだ。

「リーズナブルな価格で再エネを調達できる方法がないかどうかは常に考えている。やはり、コストを許容できる範囲まで持ってこないと持続性が生まれない。地域で作った再エネを地域で融通する仕組みを当社が中心になって作っていきたい。グループのスケールメリットを出来るだけ生かして、事業性やコストとの兼ね合いを考えながら、再エネを調達できるスキームを考えていく」(鈴木氏)

日本の小売業で初めて『RE100』に加盟

 現在は、世界的に環境・社会・ガバナンスに配慮する「ESG投資」や国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」を重視する動きが加速。自動車業界や鉄鋼業界など、製造業の動きがどうしても目立つが、イオンは2018年に日本の小売業で初めて、100%再エネでの事業運営を目指す国際イニシアティブ『RE100』に参画するなど、他社に先駆けて脱炭素化への取り組みを続けてきた。

 少子高齢化、人口減少時代に入り、ESGなどの指標が重視される昨今、こうした環境重視の取り組みは今後、消費者の購買動機や来店動機につながるのではないか。

「ここ数年、お客様の意識や行動の中に”環境”というキーワードが入ってくるようになったように思う。売上を増やすためではなく、われわれの事業が環境負荷をかけなくなる。そして、当社を利用してくれるお客様が環境活動に参画してくださることにより、その地域が良くなっていく。だからイオンで買い物しようという好循環のサイクルを生み出していきたい」(鈴木氏)

 日本最大の電力ユーザーであるイオン。小売業らしく、脱炭素へのキーワードはやはり”地域との連携”にありそうだ。

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