過去最大『2兆円』の買収を決断 【セブン&アイ】井阪隆一に問われる覚悟
財界オンライン / 2021年7月22日 7時0分
千載一遇のチャンス!
「グループにおける米コンビニエンスストア事業の収益インパクトは大きいものになってきた。米コンビニ事業は2025年度に、金融を除いたグループ営業CF(キャシュフロー)で約50%(19年度は約30%)となることを目指し、グループの成長のメインドライバーになる」
7月1日、2025年度までの新たな中期経営計画を発表したセブン&アイ・ホールディングス(HD)。社長の井阪隆一氏はこのように宣言した。
今回の中計で明確になったのは、”北米、海外における更なる成長と、踊り場を迎えた国内事業の再成長”と定義したこと。今後の成長のけん引役となるのは、長年同社をリードしてきた国内コンビニ事業ではなく、海外コンビニ事業となる。
その海外で中核となるのが北米事業で、同社はすでに米国でガソリンスタンド併設型のコンビニ約3800店舗(昨年末時点)を展開するスピードウェイを買収する方針を発表。一時は米連邦取引委員会(FTC)の一部委員から競争法上(独占禁止法)の懸念が存在するとされたが、この度、正式に買収が承認される見通しとなった。
セブンの米コンビニ買収に当局関係者が懸念を表明
同社は、2018年にもコンビニやガソリンスタンド1030店を運営する米スノコを約3400億円で買収している。だが、今回の買収価格は実に2兆円超。過去最大の買収で、それだけに今回の買収にかける井阪氏の覚悟が感じられる。
「日本のコンビニ業界は全国約5万6千店舗のうち大手3社で9割を占める。一方、米国は15万店以上のコンビニがあり、大手10社で20%しかない。米国3位の会社と経営統合できることは、われわれにとって千載一遇のチャンスであり、更なる成長に向けた大きなきっかけとなる」(井阪氏)
鈴木氏の持論が今こそ問われている時はない
セブンーイレブン・ジャパン社長だった井阪氏が、HDの社長になったのは2016年5月。この時、”日本のコンビニ生みの親”と呼ばれた前会長(現在は名誉顧問)の鈴木敏文氏が電撃退任し、それまでのトップダウン経営から集団指導体制にカジを切った。
ただ、グループの経営を支えてきたコンビニも創業から40年余が経ち、環境の変化に直面。
慢性的な人手不足や24時間営業の見直しなど、フランチャイズチェーン(FC)加盟店と本部の対立が表面化したり、決済アプリ『セブンペイ』で、セキュリティ対策の不備から不正利用も起こった。そこに来て昨年来のコロナで都心部の店舗は休業を余儀なくされたりするなど、20年度の既存店売上は前年比97・6%。コンビニを取り巻く環境は大きく変化している。
変化に対応する者が生き残るという鉄則はいつの時代も変わらないが、「時代の変化に対応せよ」という鈴木氏の持論が今こそ問われている時はない。
「今までもVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)な時代と呼ばれていたが、今回のパンデミックにより産業構造の変化が生じ、ますます変化のスピードが激しくなってきた。コロナは個社ごとに対応できるものではなく、グループでシナジーを出していかなければ十分に対応できない。セブン単独ではなく、グループ全体で品揃え強化、サービスの強化を図りたい」と語る井阪氏。
成長が見込める海外市場を攻めるのは当然だが、同社の屋台骨を支える国内市場がグラついては元も子もない。そのためのグループ連携によるシナジー効果をいかに発揮していくか。海外にしろ、国内にしろ、社長就任6年目に入った井阪氏に問われるのは、計画の実行力と覚悟である。
スーパー・ディスカウント大手 Olympicグループ会長・金澤 良樹が語る「業態改革論」
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