ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第15回)
財界オンライン / 2021年7月23日 7時0分
世界1を目指す女子柔道の姿に…
1番を目指す――。
「とにかく1番良い商品を使ってもらって、お客様から『本当にいいものをつくるね』というお褒めの言葉をいただくことで、うちの製品はこんなに喜ばれるのだと社員が誇りを持つようになる」という木村の経営思想は創業時から変わっていない。
自分と同じように、ひたすら頂上を目指して日々努力し続ける人たちはどんな人たちかと考えている時、ふと木村は、スポーツに打ち込む選手たちもそうだと気づいた。
木村が注目したのは女子柔道の選手たち。
1984年にオーストリア・ウィーンで開催された世界女子柔道選手権52㌔級で山口香選手が金メダルを取るなど、80年代は女子柔道が世間の話題を集めるようになっていた。
木村は、実はその前から、女子柔道選手を密かに応援していた。いわゆる、スポンサーとして田辺陽子、小林貴子、佐々木光といった選手たちを支援。
「佐々木選手はソウル五輪(1988年)で金メダルを取り、田辺選手は銅メダルを取りました。その頃、日本には社会人の女子柔道クラブは1つもなくてね。それが世界の晴れ舞台で堂々とメダルを獲得してくれたんやから、ホンマに嬉しかったです」と当時を振り返る。
柔道は、日本で嘉納治五郎(講道館の創始者)が生み出した武道でありスポーツ。
東京高等師範学校(現在の筑波大学)の教師でもあった嘉納治五郎は、人間力を高め、人格形成のためのスポーツとして柔道を編み出し、精神性をも重視。こうした点が世界に幅広く受け入れられ、世界の『JUDO』として発展していった歴史を持つ。
ただ、木村が起業(1971年)した頃、柔道と言えば男子がするものという考えが一般的。まだまだ女子柔道を理解する人は少なかった。
「ええ。そうでしたね。女子が足を広げてとか、寝技なんてと反発する声もあった。どこも、誰も応援してなかったんですよ。だから、僕は密かに応援することにしたんです」
世界を目指し、日々精進していく――。選手の努力する姿は、子供服の世界でナンバーワンを目指す自分のそれと重なる。木村は心の中で「よし、応援したる」という思いであった。
ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第14回)
女子卓球部からは石川佳純選手を輩出
女子柔道だけではなく、木村のスポーツ選手支援は次々と広がっていく。
女子卓球もその1つだ。
「女子柔道の体育館をつくるときに、ちょうど図面を引いているときでした。大阪の四天王寺中学校、四天王寺高校の卓球がものすごく強いんだが、高校を卒業したあとの練習がままならないんだと。それで応援してくれないかという話を受けましてね」
大阪の四天王寺は聖徳太子にゆかりのあるお寺。推古天皇元年(593年)に聖徳太子の手で創建され、1400年以上の歴史を持つ由緒ある寺。
この四天王寺は学校法人四天王寺学園を持ち、女子教育の四天王寺中学、四天王寺高校を経営。四天王寺高校は医学部進学などで実績を持つ大阪有数の進学校だが、スポーツや芸能界に活躍する人も多く、文武両道の学校として知られる。
「ええ、もう超進学校です。だけど、スポーツにも力を入れて、一芸に秀でたのを応援するという教育。勉強ができるのは勉強面で応援するし、バレーボールや卓球で秀でているのなら、その道で応援していくというやり方です」
その四天王寺高校の卓球部・大嶋雅盛監督から、木村はある提案を受けた。
「木村さん、高校時代に頑張っていても、卒業後に世界で通用しない。だから、高校からきちんと成長させていきたいんです。四天王寺で強くなったのを、わたしが監督しますから、ミキハウスで面倒見てくれませんか」
この提案に、木村は共感するものがあった。
「柔道場をつくろうと思って図面を描いている時に来たから、その図面を一度破いて、1階を柔道場、2階を卓球部という具合につくり直した。女子柔道部、女子卓球部ですごく相性が良くて、卓球でも強い子が出てきた」
その1人が石川佳純選手であり、ロンドン・リオで連続してメダルを獲得している。
「卓球もやはり中国に勝たないと。そして五輪でも勝たないといけない。そういう選手を育てていきたい」
世界1を目指す努力は、子供服づくりでも、またスポーツの領域でも続く。
(敬称略、以下次号)
ミキハウスグループ代表・木村 皓一の「世界の子供に笑顔と安心を!」(第13回)
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