【金融庁】初の理系出身長官 政権との「間合い」が課題
財界オンライン / 2021年8月8日 18時0分
初の理系出身(東大工学部卒)長官の中島淳一(1985年旧大蔵省)が率いる金融庁の新体制が始動した。「切れ者の理論家」「温厚で人当たりがいい」(有力OB)と庁内評も上々だ。
ただ、地銀再編やコロナ禍で打撃を受けた地方企業の再生を始め重要課題が山積。
「あくまで政府からの情報伝達の一環として金融機関にも協力してもらう趣旨と理解していた。こんな大騒ぎになると思ってもみなかった」。4度目の緊急事態宣言が発令された東京都内の飲食店による酒類提供規制を巡る混乱について、中島氏周辺からはこんなぼやき声が漏れる。
資金繰りを握る金融機関を使って飲食店を抑え込もうとした政府の姿勢は世論から猛反発を浴びた。批判の矛先は無理筋とも言える対応策を安易に受け入れた金融庁にも向けられた。大手行幹部は「当局の威信も傷ついた」と指摘する。
また、中島氏の前任の氷見野良三氏が1年で退いた背景には「昨秋の東京証券取引所のシステム障害の際に官邸への報告が遅れたことなどで菅義偉首相の不興を買ったことも影響した」(与党筋)との見方もある。中島氏も菅政権との間合いの取り方には苦労しそうだ。
氷見野氏同様に、中島氏も監督局長ポストを経験せずに長官に就いた。このため「金融界にどこまで睨みを利かせられるか」(アナリスト)と不安視する向きもある。ただ、異例の監督局長4年目突入となった栗田照久氏以下、銀行第一課長の山下正通氏、銀行第二課長の新発田龍史氏もそろって留任し、盤石の「銀行包囲網」を敷いている。
東大工学部計数工学科で人工知能(AI)のアルゴリズム(計算式)を熱心に研究したという中島氏には、その知見を活かし、日本のフィンテック産業を育成することも期待されている。
金融庁長官に中島淳一氏 初の理系出身、デジタル化対応が急務
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