【ソフトバンクグループからエヌビディアへ】英Armに高い市場価値が付く理由
財界オンライン / 2021年8月9日 7時0分
「『省エネ』『高セキュリティ』『低コスト』に強み時代に合わせた半導体のサブスク販売モデルも」
内海 弦 アーム日本法人社長
「ガラケーから始まり、今ではほぼ全てのスマホにArmのチップが入っています。それと同じことがデジカメ、カーナビ、テレビでも起きました」
端末がネットワークにつながる時代になり、Armの半導体が世界中に普及している。
Armは英ケンブリッジに本社を置く、1990年創業のファブレスの半導体IP会社。半導体メーカーに設計図を販売し、ライセンス料と出荷数に応じたロイヤリティ収入を得るビジネスモデルを構築している。
Armのチップがここまで広く普及した理由は3つ。
「省エネ」「高セキュリティ」「低コスト」だからだ。
「電力効率が圧倒的に優れ、最近はEVにも使われている」他、後発の強みを活かし「設計段階から特別な仕組みを入れ」て高いセキュリティを保持。さらにArmは設計図の提供のみで、半導体そのものはメーカーが作るため「市場原理が働き」、チップを安く提供できる。
2016年ソフトバンクグループに入ると、研究開発投資を加速。非上場企業になったことで「グラフィックやAIのエンジンになるようなコアテクノロジーを開発」、5G時代に向けた製品群も拡充させている。
現在、エヌビディアによる買収審査が進むが、「AIやサーバー、クラウドに強いエヌビディアとスマホやIoT端末に強いArmの技術が融合すれば良いシナジーが出る」と期待する。
半導体業界で圧倒的地位を確立するArmだが、SBGそしてエヌビディアによる買収でArmも変化の時代を迎えている。「今まででは考えられないような用途と数量のチップが出ている。従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなっていく。そこで、2~3年前からライセンス料を下げ、チップが普及したら後でお金をいただけるモデル、もっといえば使った分だけお金をいただくモデル」、いわば半導体のサブスク販売モデルの導入も進めている。
IPで戦うという戦略は変えず、ビジネスモデルを変えながら、新しい時代の半導体会社として進化を続けている。
文=北川 文子
Text by Kitagawa Ayako
アーム社長 内海 弦 Utsumi Yuzuru
profile
1961年9月生まれ、大阪府出身。87年同志社大学工学部卒業後、インテルジャパン入社。95年VLSIテクノロジを経て、97年インテルに戻り、ワイヤレス技術センター及びフィールドアプリケーション本部長代理を務める。2003年テンシリカを経て、08年アーム入社。10年バイスプレジデント、13年7月社長に就任
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