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【わたしの一冊】『エンド・オブ・ライフ』/西浦三郎・ヒューリック会長

財界オンライン / 2021年8月2日 8時0分

『エンド・オブ・ライフ』 佐々 涼子著 集英社インターナショナル 1870円(税込)

死の恐怖を感じさせないプロの仕事に見る終末期のあり方
著者の本を最初に読んだのは、2012年に第10回開高健ノンフィクション賞を受賞した『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』でした。『エンド・オブ・ライフ』は本屋大賞2020年ノンフィクション本大賞を受賞しています。どちらの本も死に関わる周りの人々をメインテーマにして書かれています。

「死」というと暗いイメージがつきまとうのが普通ですが、どちらの本も働いている人々のプロの仕事をしていることが心に伝わって来ることで「死」というものが恐いという感じを持たないで読める本です。

本書は訪問診療を行なう医師と看護師たちの内容です。最近は100歳以上まで生きられる方も多くなっており、年末に忌中ハガキを頂くと多くは80歳、90歳台で亡くなられた方です。

ただ、この本で扱われている方はまだ働き盛りと言える方が大半です。まだ小さい子供さんがいるお母さんで死を目前にして家族で潮干狩りに行きたいという方に看護師が1日付き添って出かけ、その日の夜中に亡くなられた話が書かれています。昨年からのコロナの問題で医療従事者が体力の限界まで頑張っている姿がテレビで放映されていますが、プロとはいえ良くここまで頑張れると思います。

この本の内容は、著者が2013年から2019年まで訪問看護師等に密着して書かれたものです。この間に著者の御母堂が亡くなっています。御主人が中心となって医師、看護師、理学療法士等がチームで看護にあたっていたそうですが、亡くなった後の家族の方達のスッキリした感じに著者の心のやさしさが感じられ、それが、この本から伝わる、ある意味のさわやかさと一致していると思いました。

ただ、今後も高齢化は進み、介護の問題は現状より更に厳しい状況になるのは間違いないと思われます。介護も人で行う部分だけでなく、センサー等を使って機械で対応することも考えていかねばなりません。終末期のあり方を考えるノンフィクションだと思います。

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