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【人気エコノミストの提言】コロナ感染第5波、隠れたリスクの再検討

財界オンライン / 2021年8月14日 7時0分

コロナ感染の第5波が来た。高齢者を中心にワクチン接種が進む中での感染拡大である。筆者は、これまでワクチン接種が進めば、感染リスクが低下して社会活動が平常化していくと考えていた。9月中には、2回目の接種率が50%を超えて、社会のムードが明るくなると予想していた。

 しかし、そうしたシナリオが裏切られる可能性も頭に入れておく必要がありそうだ。ひとつは、新規感染者数が未接種の若い人を中心に増え続ける可能性である。例えば、2500万人が接種を済ませたとしても、未接種の残りの1億人の間で感染が増え続ける可能性である。第5波では、高齢者の感染者が減っている。だが、ワクチン接種が若者にも十分に広がっていかなくては、絶対数として新規感染者は大幅に減りにくい。

 ワクチン効果には、発症・重症化の予防がある。これは、医療機関の病床使用率を低下させる効果がある。本来、病床使用率が上昇しなければ、感染ステージが上がりにくくなって、緊急事態宣言に追い込まれることを回避しやすくなる。しかし、ニュース報道では新規感染者の増加がクローズアップされやすい。第4回目の緊急事態宣言は、この新規感染者数に敏感に反応して発令された。

 隠れたリスクとして、どこで「コロナ感染の収束ができた」という判断を下すのかがあいまいな点が挙げられる。従来から、集団免疫の獲得まで感染防止を続けると言われてきた。この集団免疫というのが曲者で、免疫の獲得が国民の5~9割のワクチン接種でできると以前は言われていた。しかし、最近は、医療関係者から9割という声を聞いた。反対に5割で集団免疫という声は聞かなくなった。以外に判断基準が恣意的だと思った。

 ここで気になるのは若者を中心に、ワクチンを接種したくないと言っている人が多いことだ。この1年間、筆者は陰謀説や科学的見解の否定意見を山ほど聞かされた。これらは、単にデマが流布しているというより、ワクチンの科学的根拠を誰かが明快に説明して社会の共通認識にすることが行われていないから起きると考える。最後は個人の判断ではあるが、個人が正しく判断できる知識が誰にでも入手できなくては、そこで自己責任を問うことはできない。正しい情報なしに個人の判断ばかりが独り歩きするのは奇異に感じられる。

 仮に、ワクチン接種率が6割程度で、残りの4割が未接種の状態が続くと、集団免疫の状態にならない可能性がある。

 経済正常化のために「ワクチン接種が切り札だ」と言われ続けてきたが、まだ思わぬ落とし穴が隠れているかもしれない。菅首相は、10~11月に国民の希望者全員のワクチン接種を済ませると語る。隠れたリスクによって、10~11月に経済正常化が実現できないシナリオは残る。

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