【経済産業省】エネルギー基本計画改定案を提示 再エネ拡大も実現性乏しく
財界オンライン / 2021年9月2日 11時30分
経済産業省が検討を進めていたエネルギー基本計画の改定案が7月末に提示された。議論の焦点だった2030年度の電源構成の見直しでは、再生可能エネルギーの比率を36~38%(現行計画では22~24%)に引き上げた。脱炭素を重要政策に位置付ける菅義偉首相の意向を反映した「野心的な目標」(同省)だが、専門家は「実現性が乏しい」と指摘する。
改定案で示された30年度の電源構成では、この他、火力の比率を41%(現行計画では56%)に引き下げ、原子力は現行の20~22%を維持する方針が示された。燃焼時にCO2(二酸化炭素)を出さない水素やアンモニアも1%の導入を目指す。
大幅に目標が引き上げられた再エネでは、即効性の高い太陽光発電を軸に普及を進めるとした。だが、国土の7割を山地が占める日本では「大規模太陽光の適地は少なくなりつつある」(経産省幹部)状況だ。政府は荒廃農地への太陽光パネル設置といった手法で上積みを目指すが、エネルギー産業に詳しいアナリストは「『積み上げ』ではなく温室効果ガス削減目標から逆算して作った計画案で、実現はかなり難しい」と分析する。
原発でも、比率の達成には電力会社がこれまで再稼働に向けて原子力規制委員会に審査を申請した27基全ての稼働が必要。だが、根強い不信を背景に、東日本大震災後に再稼働した原発はこれまで10基にとどまる。
さらに、関西電力の金品受領問題や東京電力柏崎刈羽原発のテロ対策不備といった不祥事も相次ぎ、国民からの信頼回復は遠い。今後も再稼働が加速する保証はなく、運転時にCO2を排出しない「非化石電源」の比率を30年度6割とする政府の構想は、絵に描いた餅になりかねない可能性をはらんでいる。
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