「コロナ禍を生き抜くには?」【私の雑記帳】
財界オンライン / 2021年9月1日 7時0分
ゆく川の流れは……
『ゆく川の流れは絶えずして しかももとの水にあらず』。鴨長明の『方丈記』に出てくる句。
鴨長明がこう詠んだ1210年代(鎌倉時代)は飢饉や疫病で人々は苦しめられ、大地震などの自然災害も多く発生。
人々は川の流れを見ながら、川の光景はいつもと同じだが、流れている水は元のそれではないと感じる。全ての存在は移り変わるのだということ。
800余年後の今、わたしたちはコロナ禍という疫病に苦しめられている。歴史をひも解けば、そうした災厄を人々はしぶとく生き抜き
、”生”をつないできた。
時に過酷な状況に置かれることもあるが、生きることの意味をもう一度考え、力を合わせてこの危機を乗り越えようということ。
今はワクチンや治療薬も存在する。ただ祈るしかなかった800年前と比べて、わたしたちは時を生き抜く”知恵”を備えているのだと思う。
ただ、そのワクチンも米ファイザー社や米モデルナ社製と海外でつくられたものを輸入している。国民の命を救おうという時に、海外の知恵だけに依存していいのかという反省もある。
その意味で、塩野義製薬などが国産ワクチン開発を急いでいるのには勇気づけられる。
同社は治療薬も開発しており、ワクチンともども臨床試験は第2段階を迎えている。国の”自立”という面からも、早目の実用化が待たれる。日本の潜在力の掘り起こしの時である。
四半世紀ごとに見た戦後
今年も、『8月15日』がやって来た。1945年(昭和20年)の敗戦から76年が経った。この間に、日本にも世界にもさまざまな事が起き、いろいろな体験をしてきた。
終戦時は文字どおり、日本は焼け野が原。そこから人々は立ち上がり、第1回の東京五輪を開催(1964)、1968年には当時の西ドイツ(現ドイツ)を抜いて、自由世界第2位の経済大国になった。
そして1970年(昭和45年)には大阪万博を開き、日本の科学技術を世界に発信し、人々は高揚感を味わった。
敗戦からの25年間は高度成長の時代。夢が広がり、努力すれば報われる時代でもあった。
揺れた1970年代
次の25年は、国際政治・経済秩序の基本が揺れ始める時代。1971年はニクソン・ショックに見舞われた。金・ドル本位制が崩壊、ドルは金の裏付けのないものとなった。終戦の前年(1944)、米ドルを基軸通貨にし、固定相場で世界経済を運営しようとする『ブレトンウッズ体制』の崩壊と言われたのもそのためだ。
しかし、世界最大の経済力を背景に米ドルは基軸通貨として信認され続けた。日本はそこから、常に円高に苦しむという事態に突入。円高で輸出が打撃を受け、不況を招くという恐怖が以来続く。
さらに、1973年、1979年と2度の石油ショックが起きた。産油国が欧米の石油メジャーから石油の販売支配権を奪い、大幅値上げを断行。無資源国・日本には大変な打撃となった。
この2つのショックを日本は乗り越え、海外生産つまりグローバル化を進め、省エネや石油以外のエネルギー開発、さらには『重厚長大』から『軽薄短小』への産業構造転換を進めていった。3公社(国鉄、電電、専売)の民営化もこの時期に行われた。そしてバブル経済に突入。
1995年はネット元年
戦後50年経った1995年はバブル経済崩壊後で、金融機関は不良債権に苦しみ、新しい産業秩序を模索しているとき。
97年から98年にかけて、山一證券、北海道拓殖銀行が破綻し、続いて日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が破綻、日本は”失われた10年”の時代に入る。
以後、”失われた20年”となり、日本経済の体力強化、体質改善が時代的テーマになっていく。
1995年はインターネット元年とされる。パソコンの登場、携帯電話の本格普及、そしてスマートフォンへと続く通信革命と相まって、経済のソフト化が加速。
海外との関係で見れば、お隣・中国は『天安門事件』(89年)で欧米から激しい批判を受け、改革開放路線をさらに拡大強化しようとする。時の最高指導者・鄧小平は上海、深圳、重慶などで『南巡講話』(92年)を行い、『社会主義市場経済』なる構想を打ち出す。
その中国は2010年、日本のGDP(国内総生産)を抜いてしまった。2030年前までに米国を抜いて、世界1になるという見通しで成長路線を突き進む。
21世紀に入り、日本の立ち位置をどう図るかという命題。
DXとコロナ禍
戦後75年に当たる2020年(令和2年)はコロナ禍に見舞われた年。リモートワーク、在宅勤務で十分に仕事ができるとして、生き方・働き方改革に弾みを付けた。
感染症のパンデミック(世界的大流行)の中で、いかに生き抜き、どう働くかということについて、AI(人工知能)、IoTを駆使する時代が来たのだなど、アナログ派の筆者も痛感。
一方で、サイバー攻撃、交流サイト・SNSでの誹謗中傷と”負の面”も出てきた。テクノロジーにはプラスとマイナス両面が付きまとうことも改めて思い知らされる時代だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)時代の課題も直視していきたい。
東京海上の新事業創造
リスクの多い時代を経済人として、どう生き抜いていくか──。
「不確実性の時代にあるからこそ、われわれは今年が創業142周年になるのですが、創業時のパーパス(使命)に戻ることだと思っています」と東京海上ホールディングス社長の小宮暁さんは語り、次のように続ける。
「われわれは社会課題の解決ということを通じて、『お客様のいざ』を支えると言っていて、『いざ』は事故や災害があったときに、明日からまた復旧していこうということの『いざ』と、それから、これは明日にチャレンジするというか、まだ見ない世界を切り拓いていくときの、挑戦をするときの『いざ』というのがあります。その『いざ』をサポートしていきたい」
事業の成長と社会課題の解決は一体だという考えを小宮さんは示し、持続的な社会づくり、つまりはサステナビリティの構築に貢献していきたいと語る。
「やはりチャリティですとか、CSRということもとても大切なことだと思いますけれども、やはりマイケル・ポーター(ハーバード大教授)の言うように、CSV(共通価値の創造)が大事。本業のところをやればやるほど、世のため人のために役立っていくと。そういう方向にビジネスをフォーカスしてやってきた142年だと思います。さらにそれを強めたい」
自分達の本業を更に深掘りしていきたいという小宮さんだ。
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