【人気エコノミストの提言】日本では「コロナとの共生」 路線選択は困難
財界オンライン / 2021年9月18日 11時30分
内閣府が8月16日に発表した今年4ー6月期の実質GDP(国内総生産)1次速報は前期比+0・3%・同年率+1・3%になった。プラス成長は2四半期ぶりで、前期比への寄与度は、内需が+0・6ポイント、外需(純輸出)が▲0・3ポイント。内需の2本柱である個人消費・設備投資はともに、前期から増加した。
個人消費は、市場予想を大きく上回る前期比+0・8%になった。この点について西村康稔経済再生担当相は記者会見で、若者を中心に「旺盛な消費意欲」があり「人流が減らない」と指摘しつつ、「私にとっては非常に複雑な思い」と述べた。
4ー6月期には、3度目の緊急事態宣言が出されていた。本来であれば、繁華街の人出が減るなどして個人消費が減少し、GDPはもっと弱い数字になっていたはずである。だが、「自粛疲れ」や「宣言慣れ」などから、宣言の効き目は弱くなっている。西村氏は、景気回復を促す立場からは、GDPの強い数字は本来、歓迎対象である。だが、新型コロナウイルス対策で調整にあたっている立場からは、政策
の失敗になる。
GDPが「コロナ前」の水準を回復するのはいつか。エコノミストはそうした質問をマスコミから質問を受けることがある。だが、この質問に対して正確な予測を答えるのはきわめて難しい。なぜなら、景気がたどる今後のコースは、「新型コロナウイルス関連の動向次第」の面が、相変わらず大きいからである。
ここで言うコロナ関連の動向には、新規感染者数・重症者数・入院患者数、病床使用率、3回目の「ブースター接種」も含むワクチン接種率、より強力な変異株が今後出現するかどうか、そうした新たな変異株に対して既存のワクチンが有効かどうか、そして政府が「新型コロナ感染拡大阻止」と「経済活動水準維持」のどちらに軸足をどの程度移すかといった、さまざまな要素が絡んでくる。
最後の点は、中国やニュージーランドのように「ゼロコロナ」を目指すか、英国のように「コロナとの共生」を目指すのかという、路線選択の問題と言うこともできる。
新型コロナの問題で筆者は、昨年の初期段階から一貫して厳しい見方をとっている。北半球が冬場に向かうこの先には、屋内活動増加、学校再開、欧米での時期尚早の行動規制緩和の影響などから、新型コロナ感染拡大の新たな「波」が到来するだろう。各国の当局が「コロナとの共生」路線を選択する場合、経済活動の水準は「ゼロコロナ」の場合よりも高くなる。
ただし、そうした選択をできる前提条件は、医療体制に十分な余裕があること、さらには、感染者数の増加に連動して重症者数や死亡者数がある程度増加してもそれを容認する世論の存在である。日本でそうした条件が早期に揃うとは考えにくく、景気は不安定な低空飛行を続けざるを得ないだろう。
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