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【45歳定年をどう考える?】若年層の働き方はすでに変化 Sansanの人材サービスに見る働き方の変化

財界オンライン / 2021年9月20日 15時0分

『Eight Career Design』を利用する企業側が見られる候補者情報画面イメージ

「転職する気はなかったが、採用担当者の熱意に動かされ、転職しました」──。こう語るのはSansanの『Eight Career Design』を通じて転職した人物。人手不足の中、優秀な人材の獲得競争が激しさを増している。転職活動中の人やヘッドハンターを通じた採用だけでは求める人材を獲得するのが困難な状況で、企業は優秀な人材を他社に先駆けて獲得しようと転職の意思のない”潜在層”へのアプローチも進めている。新たな人材サービスに見る労働市場の現状とは──。
本誌・北川 文子 Text by Kitagawa Ayako

コロナ禍で変化した
企業に求めるもの

「現職で活躍する優秀層、プロフェッショナルな人材に、他社に先駆けてダイレクトにアプローチすることを当たり前にしていきたい」──。

 こう語るのは、Sansan執行役員Eight事業部 Enterprise Solutions部部長の小川泰正氏。

 Sansanといえば、法人向けのクラウド名刺管理サービス『Sansan』や個人向けの名刺アプリ(ビジネスSNS)『Eight』など”名刺”を起点に新たなサービスを提供。

 最近は名刺の読み取り技術を応用し、拠点や部署ごとに紙やPDFなど様々なフォーマットで届く請求書をデータ化してオンラインで受け取れる『Bill One』を開発。さらには、アナログで非効率なイベント運営の課題を解決する様々なデジタルソリューションも提供。

「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに様々なサービスを通じて”ビジネスインフラ”を目指している。

 そのSansanが2019年1月から提供を始めたのが人材サービスの『Eight Career Design』。キャッチフレーズは「名刺が、採用力に変わる。」だ。

 20年から事業推進責任者を務める小川氏は、『Eight Career Design』を始めた背景には「3つの理由がある」と説明する。

 1つは「採用市場の競争の激化」。デジタルトランスフォーメーションや新規事業開発の経験者など、優秀な人材は引く手あまたで採用が困難な状況が続いている。

 2つ目は、企業が採用したい人材に直接アプローチする”ダイレクトリクルーティング”など「新たな採用手法を広げる」ため。

 そして「ビジネスSNSのEightがユーザーに提供できる価値を高めるため」だ。

 昨今の日本は”メンバーシップ型”から”ジョブ型”への移行が進む他、リモートワーク、週休3日制、リカレント教育、DXの促進など働き方が大きく変化している。

 コロナ禍は、こうした変化を加速させ、働き手の意識の変化も促している。

 例えば、エン・ジャパンの調べによると、コロナ禍を経て「企業選びの軸が変わった」と答えた人は全体の40%。

 企業選びで以前より重視するようになった上位3つの項目は「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」「企業・事業に将来性があるか」「勤務時間・休日休暇・勤務地が希望に合うか」。

 個人の価値観を重視し、多様な働き方ができる環境が重視される傾向にあり、企業もそれに対応できなければ、選ばれない時代になっている。

 優秀な人材を獲得するには、企業も変化を求められ、環境の変化に応じて採用のあり方も変わらなければ対応できないという現実がある。

職種ごとの市場価値を見える化


転職の仕方も欧米流に

「Eightのユーザーは292万人ですが、そのうち20万人が1年でプロフィールが変わっています」(小川氏)

 Eightは個人向けの名刺管理アプリで、スマートフォンで名刺を撮影すると名刺情報をデジタル化して管理できるサービス。

 Eight上で”名刺交換”をしてつながると、アプリを通じて相手にメッセージや電話ができる他、相手の役職や部署が変わると通知が届く。

 また、役職の変更や自身のキャリアサマリーなどは、利用している本人が入力や更新をするため、基本、最新の情報が表示されるようになっている。

 これらのデータから、全ユーザー292万人のうち20万人のプロフィール情報が変わっていることがわかるわけだ。

 こうしたデータ結果を受け、「ユーザーをもっとサポートできるのではないか」と考えて「転職先を紹介する」Eight Career Designがスタートした。

 現在の労働市場は、転職を考えている人がリクルートやパーソルなどの転職サイトに登録してエージェントなどを通じて応募する形や、ビズリーチに登録して企業の人事部やヘッドハンターからスカウトを受けることなどが多い。

 これに対し、Eight Career Designは転職を考えていない”潜在層”かつ”現職で活躍している人材”に”企業が直接アプローチ”できるサービスだ。

 小川氏はこれを「”プロフェッショナルリクルーティング”として普及させていきたい」と語る。

 実は、Eight Career Designと似たサービスにマイクロソフトが2016年12月に買収した『LinkedIn』がある。リンクトインは約5億5000万人の登録ユーザーがいる世界最大のビジネスSNSで、海外ではダイレクトリクルーティングツールとして活用されている。

 ジョブ型雇用で解雇も当たり前の海外ではリンクトインで自らのスキルを公表したり、ネットワークを作ることがキャリアの上でも有効だが、終身雇用の日本では働き方の違いもあり、リンクトインは苦戦。日本でビジネスSNSといえば『Eight』が優位に立つ。

 Eight Career Designは、これまでに累計300社以上が利用。企業はEight上で募集要項を作成し、対象者を抽出、スカウトを送付するという流れ。Eightのユーザーは基本無料で利用でき、手数料は企業から徴収するビジネスモデルだ。

 サービスがうまく機能するにはユーザーが自身の略歴や技能を入力する必要があるが、「Eightは個人の人生に伴走するサービス。Eightにライフログを残すことで面接だけでは見えてこない、日常的な評価も見えてくる」(小川氏)と情報を入力するメリットを語る。

 名刺を通じたつながりは、個人の信頼や信用の可視化ともいえる。グローバル企業を中心に日本でもジョブ型が普及し、転職に抵抗のない若者が増えている。働き方が”会社主導”から”個人主導”になれば、Eightを通じた転職も増えていきそうだ。

人材流動化の時代 人材会社の役割は?

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