【コロナ危機の今】「目指しているのは、インフルエンザと変わらない世界の実現です」 手代木 功 塩野義製薬社長
財界オンライン / 2021年10月5日 15時0分
塩野義製薬社長 手代木 功
てしろぎ・いさお
1959年12月生まれ。宮城県出身。82年東京大学薬学部卒業後、同年4月塩野義製薬入社、99年秘書室長兼経営企画部長、02年取締役、04年常務執行役員 医薬研究開発本部長、07年専務執行役員、08年4月社長に就任。
「感染者が増え、自宅ないしホテルで療養されている方が一定数おられます。そうした方が、自宅で簡単に服用できる安全性の高い経口の抗ウイルス薬が必要です」(塩野義製薬社長・手代木功氏)
総合感染症メーカーとして、新型コロナウイルスの国産ワクチン、治療薬、下水を使った疫学調査サービスまでを開発する塩野義製薬。
その中で今、塩野義が急ピッチで開発を進めているのが「新型コロナウイルス用にデザインした化合物」。飲み薬として服用できる抗ウイルス薬だ。新型コロナウイルスは容態の急変にどう対応するかが重要な課題。自宅療養者が増える中、課題解決の1つになると期待されている。
「安全性の高い抗ウイルス薬があれば、検査結果が陽性の方は医師が必要と判断した時点で抗ウイルス薬を数日間服用いただいて、もう一度検査を受けて陰性になったら日常生活にお戻りいただく。一方で、初期に抗ウイルス薬を用いた治療を行っても症状が残ったり、重症化してしまったりすることがあるので、そうした方には別の治療を提供することが考えられると思います。塩野義製薬で目指しているのは、そうしたインフルエンザと変わらない世界の実現です」
医薬の力で、コロナ危機に直面する世界に、日常を取り戻そうと開発を進めている。 今回のコロナ危機では、製薬は安全保障とも密接にかかわる業界ということが露わになった。
手代木氏は「あまり知られていませんが、抗生物質の出発原料は100%国外依存です。有事の際に外から原料を確保できなくなれば、最終製品としての抗生物質を国内では作れなくなります」と指摘する。
その意味でも、国の主導を前提としながら「年間の必要量の3分の1くらいは国内で調達できる能力を持っておくことが国民の安心につながるのではないでしょうか」と提言する。
国産ワクチンにおいても「海外企業に1兆円を払ってワクチンを買うのと、国内でエコシステムが回るようにするためにお金を使うのでは、1兆円の意味は大きく変わる」と語る。
一方、事業においては、欧米だけでなく、中国の平安保険と合弁を作るなど「人の命に洋の東西はない」との信念で、世界に必要とされる企業として邁進する。 (北川)
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