GAFAなどが金融に進出する中、三菱UFJFGはどう反転攻勢をかけるか
財界オンライン / 2021年10月15日 7時0分
利用者が商品を自由に組み合わせ
金融のデジタル化が本格化する中、日本の大手銀行グループは、新たなプラットフォームを築くことができるか─。
2021年9月2日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)はスマートフォンを通じて、資産形成に向けた様々な金融サービスを総合的に提供するサービス「MoneyCanbas」を今年12月から開始することを発表した。
【写真】「MoneyCanvas」のサービスイメージ
株式や投資信託、クラウドファンディング、ファンドラップ、ロボアドバイザー、ポイント運用、さらには保険など、利用者がニーズに合わせて、自由に組み合わせて利用することが可能。
今回のサービスが生まれた背景にはMUFGが今年度からスタートさせた中期経営計画がある。この中で新たに「デジタルサービス部門」を立ち上げた。
新サービスを検討する中で「デジタルといえばスマートフォンが、お客様の生活に密接に関わっており、スマホ起点のサービスが必要だった。そして他の企業様と協業して、お客様に金融サービスをお届けすることが重要だと考えた」と話すのは、三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部企画グループ次長の田中誉俊氏。
今回のサービスが対象とするのは、資産形成をこれから始める、あるいは始めたばかりという層や、まだ資産形成の重要性に気づいていない層。「ご自身に合ったサービスを見つけていただき、スムーズにお取引できるようにしていく」(田中氏)
これを実現するのがAPI(Application Programming Interface=ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に公開することで、第三者が開発したソフトウェアと機能を共有できるようにできる仕組み)。MUFGのサービス、あるいはサービスに参画する他社のサービスに変更があっても、消費者はシームレスに取引をすることができる。
このMoneyCanvasの特徴は、MUFGや三菱グループの企業だけでなく、グループを超えた他の大手、ベンチャー企業も参画していること。
ポイントの株式交換サービスで大和証券グループのスマホ証券会社・CONNECT、保険では東京海上日動に加えて損害保険ジャパン、貸付ファンドのオンラインマーケットを展開するベンチャー・ファンズといった顔ぶれ。
従来、どうしても日本の銀行は自前主義で、グループ内で完結させるか、自らが属する企業グループ内に閉じてしまう傾向があった。それが今回は「オープンプラットフォーム」としている。この背景は何か。
「お客様に合う商品をお届けする事を第一に考え、それがグループ外にあるのなら自前に拘らず協業により提供する、という考えがあった」と田中氏。
例えば、損保ジャパンはデータ活用ビジネスにカジを切っていることに加え、介護ビジネスを展開。若い世代にも関心の高い領域を手掛けていることで連携を決めた。
大和証券グループのCONNECTはスマホ特化で、初心者を対象としていることが大きかった。グループのauカブコム証券も参画しているが、どちらかというとデイトレードを行うプロに近い層がターゲットだけに棲み分けができるという判断。
ファンズは、クラウドファンディングに取り組む企業。個人からの資金を活用して事業を行いたい企業がファンドを組成、個人が出資した資金を、事業を行うグループ会社に貸付、その事業から得られた利益が返済金となり、最終的に投資家に分配される。投資家にとっては少額から、ミドルリスク・ミドルリターンの投資となり、企業側は新たな資金調達の手段となる。
実はファンズは、19年にMUFGが開催したアクセラレータプログラムで準グランプリを獲得した企業。新規事業にかける思いを共有したベンチャーが、自社サービスに載る存在になったということ。「個人、法人いずれのお客様にも付加価値を提供する協業ができるようになった」(田中氏)
さらに、今回のシステム構築を担っているのが、フィンテックベンチャーのフィナテキスト。同社は非金融企業などに、金融のインフラを提供する事業を展開している。これも従来であれば大手ITベンダーなどに依頼するところだ。
「社長の亀澤(宏規氏)以下、様々なことに『挑戦をしよう』と言っている。デジタルサービスにおける挑戦に重要なのが開発スピードと柔軟性。この要素を持たれていた点が決め手」
課題は顧客接点。かつては銀行店舗で現金を引き出していたものが、その後コンビニに舞台が移り、今はキャッシュレスの時代になっている。銀行利用者へのアピールだけでなく、現在提携しているNTTドコモを始めとした他社との協業も重要になる。
また、MoneyCanvasでの決済機能については、まだ決まっているものはないが、MUFGとしては年内にもリクルートと連携してキャッシュレス決済を始めるなど新たな取り組みを進める。
今は、グーグルが日本の決済ベンチャーを買収するなど、海外の大手が日本の金融に入り込もうとし始めている。これに対しては「『お金を融通する』のが金融機関の本業。お金のことで困ったら、我々を頼っていただける存在になる。本件ではお客様の資産形成に必要な商品・方法をスマホ起点・デジタル活用により融通する形にて、培ってきた金融の専門家としての力を発揮したい」と話す。
ITプラットフォーマーに対し、金融発のプラットフォームとして対抗することができるか。
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