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【人気エコノミストの提言】新政権のコロナ対応の課題

財界オンライン / 2021年10月16日 11時30分

菅政権はわずか1年の間に、デジタル庁創設、カーボンニュートラル2050の目標設置、不妊治療の保険適用、携帯電話料金の大幅引き下げなど重量級の政策を矢継ぎ早に進めた。首相自らが政権の重要課題を決定し、トップダウンで関与する手法が功を奏した。

 しかし、安倍前首相と同様、コロナ対応で躓いた。首相は緊急事態宣言を発出できるが、それ以外は都道府県知事が多くの権限を有する。厄介なのは都道府県知事も完全な権限を持たず、市区町村長と分担している点だ。例えば、病床を用意するのは都道府県知事だが、患者を見つけて検査し、病院に送り込むのは市長や区長の役割だ。もう一つの大きな問題は、日本の医療能力の圧倒的多数を占めるのは民間病院・診療所であり、誰も指揮権を有していないことだ。

 誰が首相になってもコロナへの対応は難しい。ただ、コロナ対応で菅首相がいくつかの計算ミスを犯したのも事実だろう。国民の健康損失リスクに対する許容度が低い中、昨年末の感染第三波におけるGo To事業の推進やその後の緊急事態宣言の発出の遅れ、第四波における緊急事態宣言の発出の遅れ、今年7月のオリンピック開催。これらについて、世論調査では国民の過半が感染拡大回避のための慎重な対応を求めていたが、菅首相は十分な説明がないままに政策を進めた。

 いずれも賛否が分かれる難しい問題だが、それが正しい政策であっても、国民の過半が賛同しない政策を遂行する場合は、丁寧な説明が必要だろう。次期政権は菅政権の教訓をもとに、国民への丁寧な説明が必要だ。

 ただ、説明だけで解決できない本質的な問題が残る。前述した通り、日本の医療は、中小規模の民間診療所・病院が圧倒的多数を占める。この1年半もコロナ対応が可能な病床の拡大は限定的だった。その結果、経済活動が活発化すると、感染者数が増え、医療能力が逼迫し、それを受けて緊急事態宣言が発出され、経済活動を抑制する、ということが繰り返された。菅首相の尽力でワクチン接種は加速したが、医療体制が貧弱である限り、現在の緊急事態が終結した後も、この悪循環から抜け出すのは難しい。

 現在のコロナ禍を巡る日本の状況は、1990年代の不良債権問題に通ずる。早い段階から、政策当局者は、公的資金を銀行に注入しなければ経済の本格的な回復は難しいとの認識を深めていた。政治的に受け入れられず、公共事業を中心とする景気対策に終始し、最終解決までに長い年月を要した。今回も、パンデミックの有事には、民間医療提供者の私権に踏み込むことを可能にする制度改革を断行し、医療能力を強化することなしには、経済活動の早期の正常化は困難だろう。

 治療薬が早期に普及すればよいが、それが難しく、現在の状態が放置される場合には、高い支持率でスタートしても新政権は立ち行かなくなるリスクがある。

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