サウジアラムコ追加売り出しの背景に原油安?
財経新聞 / 2024年6月10日 16時19分
●サウジアラムコが追加売り出しで112憶ドル調達
ロイター通信によると、サウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコは7日、1株=27.25リヤル(7.27ドル)で、112億ドル(約1兆7600億円)規模の追加売り出しを行った。2019年のIPO(新規株式公開)時に調達した294億ドル以来となる、大規模な売り出しだ。
この売り出しで得た資金は、政府系ファンドのパブリック・インベスト・ファンド(PIF)に充当される公算が高いと見られている。
ここ数カ月の原油安と世界的な経済減速懸念による需要減少により、サウジアラビアの財政赤字も続いており、サウジアラムコも5月に発表した2024年第1四半期は、14%の減益だった。
原油安は続くと見られているが、サウジ政府とサウジアラムコはどうなるのだろうか?
●サウジアラムコの現在
サウジ政府は、サウジアラムコ株の約82%を保有し、PIFが約16%を保有している。サウジ政府にとってサウジアラムコからの配当金や税金は大きな収入源である。今回の追加売り出しについては、少し前から囁かれていたが、サウジ政府はノーコメントだった。
サウジの実質的な指導者であるムハンマド皇太子は、PIFを通じて、以前から掲げる石油依存からの脱却と経済多角化事業の推進に充てるとしている。
売り出し株の半数以上が日本を含む外国人投資家に割り当てられると見られており、前回のIPOとは異なり、外国人投資家からの人気も高い。
サウジアラムコは、エヌビディアなどに抜かれ現在時価総額世界5位になっているが、今後巻き返す可能性も秘めている。
●配当金などが重荷に?
サウジアラムコは減益だったにも関わらず、310億ドル(約4兆9000億円)の配当金は維持される。6%を超える高い配当利回りは、海外投資家にとって魅力である。一方で配当金がフリーキャッシュフローを上回っているという異常事態が続いており、今後の財政状況が不安要素である。
年初来から株価は15%下落しており、時価総額もハイテク企業に次々と抜かれ、2019年のIPO当時のような勢いはない。
サウジアラビアもサウジアラムコも正常化するためには、1バレル=90ドルが最低ラインとも言われている。両者ともに石油依存から脱却するには時間がかかる。
今後も追加売り出しがあるかもしれないが、市場の関心は徐々に薄れていくかもしれない。
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