火星往復ミッションは、重大な腎臓障害を生じさせる可能性 UCLの研究
財経新聞 / 2024年6月16日 16時55分
国際宇宙ステーション(ISS)は、地球の約400km上空を周回しており、人類はここでの宇宙滞在期間の記録を飛躍的に伸ばしてきた。だが厳密な意味で、ここが宇宙なのかと言えば、必ずしもそうとは言えない。なぜならば、ここは地上と比べて弱いながらも地球の磁場によって守られているからだ。
真の宇宙空間で懸念される太陽からの強い放射線や、宇宙のあらゆる方向から飛来する宇宙線の影響を、ISSのクルーたちはそれほど強く受けない。だが火星探査となると、その懸念は桁違いのものになる。
アポロ計画では、6~12日間にわたり、クルーは真の宇宙空間に滞在したわけだが、火星探査となると、その期間は往復で3年近くに及ぶ。だがそのような長期間での宇宙滞在で、クルーの健康状態がどう変化するのか具体的に研究した事例はこれまでほとんどなかった。
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の科学者は、1年半から2年半の被ばく量に相当する銀河宇宙放射線(GCR)に暴露したマウスに起こる様々な変化を観察し、火星報復ミッションにより、人体に起きる変化について考察した結果を公表した。
その結果は、1カ月未満で腎臓が収縮。腎臓で起きる塩の処理反応に変化が起き、それが腎臓結石を促進させるという。これが起きる原因は、微小重力下にさらされることと、GCRにさらされることの両方によるとされ、現時点ではどちらが主要因であるのかははっきりせず、それを特定するにはさらなる検証が必要だという。
2年半の宇宙滞在により、腎臓は致命的な損傷を受け、もはや機能回復ができないほどの深刻な事態に陥ってしまう可能性もあるという。
ごく短期間だった月面ミッションにおいても、クルーたちには腎臓結石が確認されており、腎臓をどう守るかが宇宙での長期滞在ミッションでの最重要課題と言えよう。これが解決されなければ、クルーは火星に人工透析装置を持ち込まなければ、生きて活動を継続できないという事態にもなりかねない。
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